駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本] マーケットの魔術師 (ジャック・D. シュワッガー)

概要

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主として1980年代に活躍したトレーダーたちのインタビューを集めた本。投資本の中でも有名なもので、あちこちで名前を目にします。駄犬は2017年になってやっと読みましたが、今でも参考になる本だと思いました。

登場するトレーダーたちの手がけるマーケットや手法はさまざまです。コモディティのトレーダーもいれば株式のトレーダーもいますし、ファンダメンタルズ重視だったりテクニカル重視だったりします。読んでいくと、人それぞれで異なる部分と、多くのトレーダーに共通する部分があることがわかります。共通する部分は相場で生き残るための必須条件なんだろう、それ以外の部分は自分の好みや性格にあわせて選択するものなんだ、という区別ができますし、共通する部分は何人ものインタビューに繰り返し出てくるので、反復されて自分の中に定着しやすいという気もします。

また、大成功したトレーダーでも、初心者の頃はとんでもないミスをして損失を出したり、人によっては資産をすべて飛ばして退場したりします。駄犬もいろいろと相場で失敗してきましたが、本書の失敗エピソードを読むと、誰もが通る道なんだと勇気づけられます。

その当時の市況について語った部分はもう参考にならないし、フロア・トレーダー(場立ち)のようにほとんどいなくなってしまった人たちへのインタビューも含まれています。また、2000年以降の動き、たとえばHFTの登場やデリバティブ市場の拡大などは当然ながら反映されていませんし、彼らの手法も今の日本株に通用するものではないような印象があります。それでも、成功したトレーダーの態度や手法には学べるものがあります。

以下、参考になったトレーダーについて、今日でも通用する箇所としてリスク管理の手法などをざっくりとまとめます。発言をそのまま引用した箇所は「」で囲ってあります。

駄犬にとって特に興味深かったのはマイケル・スタインハルトの手法です。売りと買いを同時に持ついわゆるロング・ショート戦略なのですが、売り買いの割合を極端に動かすんですね。相場観のなせる技なのでしょうがその詳細は詳しく語られず。駄犬もロング・ショートでやっていますが、下げ相場で売り買いの比率を大きく売りに傾けられればと考えることがあります。ただそのタイミングが難しいんですよね。

マイケル・マーカス

プロフィール

  • コモディティのトレーダー
  • テクニカル、ファンダメンタルズのバランス型
  • 10年間でファンドの運用資金を2500倍にした

リスク管理

  • 1つのトレード・アイデアに対しては資金の5%しか使わない。また、2つの商品に相関関係があるのであれば1つのアイデアと考える
  • 「僕が考えている全ての条件が一致するときは、普段の5倍から6倍のポジションを取る」
    • ⇒ほとんどの利益は全ての条件が一致したときのトレードからもたらされており、他のトレードはトントン。
  • 常にストップを使う。トレードするときにストップ・オーダーを入れておく

ポジション管理

  • 「最も重要なことは、利が乗っているポジションはできるだけそのままにしておいて、やられているポジションは早く切るということ」
  • 「パフォーマンスのトレンドが変化し始めたらいったん手仕舞って、考え直すサインだよ。もしくは積み上げてきたときよりも速いペースで利益が減り始めたら、それも警告だと思っていい」

ブルース・コフナー

プロフィール

  • 為替のトレーダー
  • ファンダメンタルズ重視
  • 10年間の間、年率87%のパフォーマンスをあげた

リスク管理

  • 「1回のトレードで自分のポートフォリオの1%以上はリスクを冒さないようにしている」
  • ポジションを持つ場合、ストップポイントを決めておく
    • ストップポイントはテクニカル的に見て決める
    • それによって自ずとポジション・サイズも決まってくる

ポジション管理

  • 「僕たちは、週に一度は全ての通貨に対するシナリオを考えておいて、レンジも決めておくんだ。だから、レンジをブレークしてきたら、どうするかということも決めてある」

テクニカル分析について

  • 「どちらかといえば、ファンダメンタルズ分析のほうが今は重要だと思う。1970年代だったら、テクニカル分析だけで容易に稼ぐこともできたんだ。あまりだましのブレークが多くなかったからね。」
  • 「今は違う。皆チャーチストになっているし、驚くほどの数のテクニカルなトレーディング・システムができている。テクニカル・トレーダーにとっては儲けることが難しくなってしまったんだ」

リチャード・デニス

プロフィール

リスク管理

  • 常にストップ・オーダーを入れる。ストップより早く損切りするのかオッケー
  • 「皆がストップ・オーダーを入れるところでストップを入れるのはあまり賢いことではない」

ポジション管理

  • 「トレードした後1~2週間たっても損が出ている場合、明らかに間違っている。相当な時間が経過しているにもかかわらず、損益分岐点の辺りにいる場合もたぶん間違っているだろう」(補足:リチャード・デニスはトレンドフォローのトレーダー)

株式市場について

  • 「私のリサーチによると、個別株の値動きはコモディティに比べランダムに近い。明らかにコモディティはトレンドを描き、論争になるほど株式はランダムな動きをする」
  • 「ランダムな性質から脱して明かなトレンドを形成するのに十分なファンダメンタル情報が個別銘柄には不足しているんだと思う。株式の銘柄数ほどコモディティの数はないからね」

マイケル・スタインハルト

プロフィール

  • 株式のトレーダー
  • ファンダメンタルズ重視
  • ファンド設立以来21年間、年率30%以上のパフォーマンスを上げた

リスク管理

  • ストップ・オーダーは使わない
  • 長期でポジションを取り、自分の洞察に変化が起こらない限りポジションを維持する。損切りはしない
  • 短期的に逆の方向に株価が動いた場合、両建てはする。ポジションのうち20~40%をカバーする

ポジション管理

  • 空売りを積極的にする。常にショートを持つ。
  • 平均すると、40%のネット・ロング(補足:買いと売りの差を取ると、資産額の40%だけ買いのほうが 多いということう) *「あるときは15%から20%のネット・ショートになったことがあり、またあるときは100%を超えるネット・ロングになったことがあります」