駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[今週のトレード] 2021/6/25

今週の資産推移は+0.2%(+41万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+0.8%、マザーズ指数が+1.7%と指数に対してアンダーパフォームでした。

月曜日に日経平均が-3.3%(-953円)下がるも、火曜日から力強いリバウンドが始まって1週間終わってみればいずれの指数もプラスとなりました。月曜日に思いのほか下がるのにビビって、確信の度合いが低いポジションを減らしたり売ったりしてしまいましたが、これは結果的には間違いでパフォーマンスを損ねることとなりました。テーパリング懸念とはいったい何だったの。

先週に続いてIPOセカンダリは低調で、吸収金額が数十億あるものはたいてい公募価格を割って初値を付けるし、そこからさらに下げていくケースが目立ちます。自分はというとペイロール、セレンディップ、アイドマ、全研本社と触って合計で約200万の確定損失となりました。何やってんの。気質が逆張りなので、好意的に見ているIPO銘柄が公募価格より下の水準でダラダラしているのを見るとつい買ってしまって、それで損切りが続いて損失を積み上げた感じ。IPOセカンダリは難易度が高く期待値を取りづらいので、よほど自信がなければ手を出さない方がよい、と頭では分かっているのに前々から同じようなポジションを取ることがあってトータルするとそこそこ負けていると思われます。今週はあらためて反省しました。

しかしIPOセカンダリは今月から急に反応が悪くなって驚いています。原因としては過密スケジュールやモダリスのロックアップ破りの件が指摘されており、個人的にはロックアップ破りが個人投資家のセンチメントを冷やした効果は大きいように感じられます。ただ、そもそも大した見所のない小型株が需給だけで公募価格の3倍とかで寄るほうがおかしな話で、今くらいの値動きのほうが正常であるとも思います。

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今週の取引

6640 I-PEX (+1,839,261)

手じまい。前回の決算シーズンで取ったポジション。月曜日の下げ相場で手じまいました。ここは1Q決算は良かったものの1Qの数字がピークのように思われ、あまり長くは保有しづらかったです。

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 198,604,387円
  • 前日比 +5,562,854円 (+2.88%)
  • 月初比 +7,515,501円 (+3.93%)
  • 年初比 +72,586,468円 (+57.60%)
現物

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信用

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先物

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[今週のトレード] 2021/6/18

今週の資産推移は-0.1%(-11万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが-0.4%、マザーズ指数が-0.4%と指数に対してアウトパフォームでした。

水曜深夜のFOMCがサプライズでテーパリングも意識される内容で、低いボラティリティで落ち着いていた相場がいくらか崩れた感じ。木金の2日でマザーズ指数が2.2%下げて、とくに金曜の後場は恐怖を感じる下げ方でした。Twitterやブログをみるとポジションを縮小した人が多いようです。今年はこういうのがあってもすぐに落ち着いてきたし、どちらかというと今回も同じになるのではと思っています。買いポジションのサイズは先週末と比べて約2700万減りましたが、リスク回避で減らしたわけではなく、決算ギャンブルの手じまいと上がってきたポジションをスライスで売ったのが原因です。

www.bloomberg.co.jp

6月IPOは盛り上がりに欠けており、初値も低めに寄るし、寄った後の値動きも総じて冴えません。ワンダープラネットとEnjinは少し前であれば初日に寄らなかったと思いますがあっさり寄って、モメンタムも1日そこいらしか保たないし、IPOセカンダリの参加者に貪欲さが失われているような印象があります。長期保有の目線ではチャンスが多いと思いますし、来週以降のIPOで目を付けているものが低く寄ることを期待しています。

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 198,198,658円
  • 前日比 -3,099,292円 (-1.54%)
  • 月初比 +7,109,772円 (+3.72%)
  • 年初比 +72,180,739円 (+57.28%)
現物

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信用

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先物

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[今週のトレード] 2021/6/11

今週の資産推移は+3.9%(+744万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが-0.3%、マザーズ指数が+5.6%と指数に対してまちまちでした。

1週間を通じて日経平均の値幅が300円ほどと、凪のような週でした。アメリカ市場もボラティリティが低くVIXは15.6まで下がっています。今週はマザーズ指数がTOPIXを大きく上回っていますが、マネーフォワード、freee、メルカリ、BASE、メドレーの寄与トップ5で上げ幅の半分強を占めており、海外投資家の好む大型SaaSが買われていました。エーザイのアデュカヌマブ承認でバイオ株が買われたのも寄与したようです。アメリカでもナスダック(+1.85%)がダウ(-0.80%)を上回っています。今年はグロース株が買われる地合になってもなかなか続かないですが、今月に入ってインフレ懸念が騒がれなくなってきており雰囲気の変化も感じます。

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6月決算ギャンブルで取ったポジションもあらかた捌けて、あとは今月のIPOでめぼしいやつがあれば触ろうかなというくらい。リオープンで旅行需要が伸びるまえにどこか国内旅行に出掛けようと思って、行き先を考えています。

今週の取引

4934 プレミアアンチエイジング (+9,710,866)

手じまい。2Q決算発表後に少しずつ株数を減らしていて、来週月曜日の3Q決算発表をまたぎたくなかったため直前ですべて売り切りました。

3Q決算については、 自分の参照できる範囲でドラッグストアのPOSデータがQonQで横ばいになっていることから、3Q単体の業績が良いという根拠を持てませんでした。通信販売については状況を推測する方法があまり見つからなくて、販路としてはこちらがメインなので全体としてもよくわからない感じではあります。とはいえ個人投資家の人気銘柄になっており、視聴率が高まっている状況で期待されるハードルを越えるような決算が出てくる可能性が高いとは思えません。

上場から間もないこともあるでしょうが機関投資家保有割合が小さく、それに対して株ブログやTwitterを見るとここを保有している人は本当に多いです。千株単位で保有している個人も何人も見かけます。IPOの当選株数270万株に対して信用買い残が68万株あり、ここ3ヶ月のモメンタムは個人投資家が作ってきたものではないかと思っていて、ひとたび逆流すれば下げ足も速いのでは。

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この会社の成長がどのあたりで落ち着くのか自分にはわからないし、現在の時価総額1,351億はファンケル新日本製薬と比べて決して割高にも見えませんが、自分はもうここで十分だと思いました。

4936アクシージア (-)

1ヶ月くらい前から買い始めて、少しずつ株数を増やしていたもの。同じ新興の化粧品会社であることからプレミアアンチエイジングと入れ替えるようなイメージでポートフォリオに入れました。

中国の高価格帯化粧品という成長市場で事業をしていること、3Q決算で上方修正をして売上がYonYで+30.5%の予想となったこと、7月末権利日で発表した株主優待が利回り換算で10%を越える(ただしリセールバリューだともっと下がるはず。メルカリ&ヤフオクの取引実績が少なくて相場感はわからず)ためイベントドリブン要素があること、これから中国人旅行客のインバウンド需要が戻ってきたときにいくらか追い風を受けられること、2021/4/27付の日本証券新聞に「段社長に聞くと、香港・シンガポールの海外投資家とのワンオンワンミーティングを数多く行っている」とあり彼らが買ってくれるという淡い期待があること、あたりから3Q決算後も保有できると考えました。

あまり強い自信のあるポジションではないのですが、まずは優待の権利付き最終日まで保有して、そこまでの値動きで考えるつもりです。

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 198,309,856円
  • 前日比 -2,912,125円 (-1.45%)
  • 月初比 +7,220,970円 (+3.78%)
  • 年初比 +72,291,937円 (+57.37%)
現物

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信用

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先物

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[今週のトレード] 2021/6/4

今週の資産推移は+1.4%(+262万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+0.6%、マザーズ指数が-2.2%と指数に対してアウトパフォームでした。

5月の資産推移は+14.0%(+2349万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+1.9%、マザーズ指数が-4.3%と指数に対してアウトパフォームでした。

5月は指数を約15%上回る好調なパフォーマンスとなりました。ポートフォリオを見ると、月間のプラス上位がプレミアアンチ+40.8%、BuySell+32.7%、スプリックス+28.9%、マイナス上位が勤次郎-23.5%、セルム-10.5%、STI-9.1%でした。

金額ではプラス上位の3銘柄で+1300万、マイナス上位の3銘柄で-900万。あとは決算発表前後でポジションを取って継続保有とした5銘柄(岡本工作機械、テラプローブ、I-PEX、イノベーション、日本エアーテック)で+1200万、決算発表で即座に手じまった決算ギャンブルのポジションが30くらいあって+8万。残りのポジションをひっくるめて+700万。(概数、確定損益と含み損益の合計)

今回の決算シーズンでは決算発表から素直にモメンタムに乗って上がっていくケースが多く見られ、決算ギャンブルで買った銘柄でいうとティラド、インテージ、EPS、日本商業開発、デジタルHD、北川鉄工所は決算発表後も保有していれば利益を伸ばせていました。自分は決算ギャンブルのポジションをほぼ決算発表の翌日に売りますが、次からは映える決算を出したやつは1~2週間くらい引っ張るようにするかも。自分は決算の中身を見る能力は(少なくとも小型株の参加者の中では)相対的に高い方と思うので、決算でもっとガラッとポートフォリオを組み替えるほうがパフォーマンス伸びるのかも、というのも思いました。今月の反省点はセルムを1350円くらいから買い始めたことで、自分はわりと需給を見ないでバリュエーションだけ考えて買うのですがIPO直後の銘柄はちょっとそれだと良くないというのを思い知ることとなりました。

月1くらいで銘柄ごとに損益を出して振り返りをやりたいものの、作業が自動化されておらず銘柄ごとに月間の騰落率を調べて損益を計算して、とやるのがダルすぎて雑になってこの記事で書いてるようなレベル感になってしまうのでもう少し何とかしたい。プログラマなのでコードを書けという話ではあって、さしあたっては楽天証券からポートフォリオを日次で取得して、データベースに貯めていくというのをやりたいと考えています。 

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 190,869,977円
  • 前日比 +132,138円 (+0.07%)
  • 月初比 -218,909円 (-0.11%)
  • 年初比 +64,852,058円 (+51.46%)
現物

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信用

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先物

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[投資本] 欲望と幻想の市場 (エドウィン・ルフェーブル)

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バモアへのインタビューを元にして書かれた小説。主人公(リバモア)は華のあるギャンブラーで、小説として面白く読めました。ただ自分が短期のトレーダーでないためでしょうが、投資の本としてはこれといって感銘を受けませんでした。

若きリバモアは取引所の仕事をしながらテープリーディングの能力を高め、合百(株価の短期的な値動きに賭けるギャンブルを提供する業者。実際の株は取引しない。ノミ屋みたいなもの)で賭けをして大いに勝ちます。この時期にやっていたことは今でいうと板読みのスキャルピングに近く、ティッカーテープの出力をパターン認識してごく短期の値動きを予想していたようです。取引の回数も相応に多かったでしょうし、合百の業者をいくつも出禁になっており、この頃のリバモアは期待値のあるトレード(というかギャンブル)をして、勝つべくして勝っていたように思われます。

やがて資金の額が大きくなると、取引所で実際の株をトレードするようになり、ポジションの保有期間も長くなっていきます。トレンドフォロー戦略で、しかもピラミッディングで積み増していくので勝つときは大きく勝つけど、負けるときはボロ負けします。相場の有名人で周囲の人から愛されており、手ひどくやられても資金の出し手が現れて相場に復帰するというのを繰り返しています。この頃になると、需給の読みに優れた洞察力があるのは確かな気がしつつも、本当にエッジのあるトレードをしているのかどうか読んでいてよくわからなくなります。

本書の後半では相場操縦がテーマとなり、情報の広がりをどうコントロールするか、他の相場操縦者とどう駆け引きするかといったことが語られます。

舞台が100年前のマーケットであり、当時ならではの手法が描かれています。たとえば第4章ではリバモアが合百であらかじめポジションを持っておいて、取引所でその株を取引して有利なほうに株価を動かすシーンが出てきます。また、合百の業者も同じようなことをしていて、客のポジションが特定の株で大きく片寄ったときに、取引所に注文を出して株価を逆の方向に動かすことで客を飛ばしていたそうです。このあたりとても面白く読みました。相場操縦のくだりにしても、参加者の層も薄くて多様性もなくて、コントロールの利きやすい環境だった当時のマーケットだからこそ機能していた方法のように思われました。

小説の書きっぷりなのかもしれませんが、本書のリバモアは自信に満ちあふれており、相場のことを予言者のように語ります。自身のアイディアに賭けて大きなリスクを取る豪胆さが印象に残りました。

[今週のトレード] 2021/5/28

今週の資産推移は+0.2%(+32万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+2.2%、マザーズ指数が+1.5%と指数に対してアンダーパフォームでした。

今週は穏やかな上げ相場でした。決算シーズンが終わってポートフォリオの入れ替えも済んで、あまり相場を見なくなる時期で、気づいたら1週間が過ぎていたという感じ。指数に2%くらいアンダーパフォームしていますが、相対的に大型株が強く、日経平均先物の売りと個別株の買いが股割きになったのが大きかったです。日経平均+2.9%に対してJASDAQ平均+0.7%、東証小型株指数+0.2%という数字でした。

高齢者向けのワクチン接種が順調に進捗しており、世田谷区でも7月末までに完了の見通しと発表されました。区民全体への接種完了は12月末とのことで、他の先進国にくらべて遅れている日本でも、年末にはおおむねワクチン接種が終わりそうです。今週は旅行やレジャーなどのセクタが買われましたが、コロナ収束後の業績回復は濃淡あるもののおおむね織り込まれたように思っていて、今からアフターコロナと言われる銘柄を買うのもな、と手を出さずに見ています。

www.nikkei.com

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ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 188,245,803円
  • 前日比 -2,491,801円 (-1.31%)
  • 月初比 +20,642,494円 (+12.32%)
  • 年初比 +62,227,884円 (+49.38%)
現物

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信用

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先物

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[投資本] 最も賢い億万長者 (グレゴリー・ザッカーマン)

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クオンツファンド「メダリオン」の卓越したパフォーマンスで知られるルネサンステクノロジーズを扱ったノンフィクション。シモンズの生い立ちからはじまり、ファンドの設立から2018年頃の状況までが描かれます。あくまでルネサンステクノロジーズの歴史を描いた本で、残念ながらメダリオンのトレード戦略について書かれた箇所は少なく、内容も断片的です。

メダリオンの成功を成し遂げるまでに何度も失敗をしており、それを乗り越える過程で投資戦略も変化してきています。最初から機械学習のアプローチでやっていたわけでもないし、株を対象にしていたわけでもなかったんですね。自分はメダリオンのイメージしかなかったので、このあたり新鮮に感じました。おおまかに以下のような変遷があったようです。

最初期

  • シモンズが1978年にヘッジファンド「リムロイ(後のルネサンステクノロジーズ)」を設立
  • リムロイは数学を用いた分析的な投資をするとうたっており、シモンズらは線形代数による先物価格予測システム「ピギーバスケット」を実装したが、このシステムはうまく機能しなかった
  • 結局はパートナーの1人であるレニー・バウムが裁量トレードをやるようになり、1984年に国債のトレードで巨大な損失を出した

先物トレンドフォロー

  • バウムはファンドを去り、替わってジェームズ・アックスが投資戦略を主導するようになる
  • 1985年にアックスがマルコフ連鎖を用いた新たなシステムを開発。このシステムは先物のトレンドフォロー戦略をメインとしたものであったようである
  • 1987年にはルネ・カルモナがシステムに機械学習カーネル法)の手法を取り入れる。ただしこの時点ではシモンズが説明可能性について疑問を持ち、あまり積極的に活用されなかった

先物スタットアーブ

  • 1988年頃からシモンズとアックスの関係が悪化。1989年にアックスはファンドを去り、替わってエルウィン・バーレカンプが投資戦略を主導するようになる
  • バーレカンプはアノマリーなどの統計的根拠に基づく先物の短期ポジションを、ショートも含めて大量に取るというスタットアーブに近い戦略のシステムを作る
  • このシステムは1990年に+55.9%のリターンを上げるが、なまじ上手くいったためにシモンズの現場介入が激しくなり(自身の相場観でゴールドを買えとしつこく言ったらしい。それでは裁量トレードである)バーレカンプと関係が悪化し、バーレカンプはファンドを去る

株式スタットアーブ

  • シモンズはバーレカンプのシステムを発展させ、株式など他のアセットクラスも扱えるより包括的なものにしたいと考えた。そのためにヘンリー・ラウファーをスカウトし、ラウファーが投資戦略を主導するようになる
  • ラウファーは機械学習の本格的な導入、単一のモデルの採用(アセットクラスや市場環境ごとに異なるモデルを作るのではなく、たった1つのモデルですべて扱うこと)、価格データの細分化(12時間足から5分足への変更)といった重要な仕事をした
  • 1993年からはピーター・ブラウンらIBM音声認識研究者たちを盛んに引き抜くようになり、彼らがやがてファンドの主要ポジションを占めるようになる。ランダム性の高い時系列データからシグナルを抽出するという点で類似性があったのと、実装能力の高さが活躍に繋がった
  • その後ファンドは規模を拡大し200名を超える陣容になるが、バーレカンプ、ラウファー、ブラウンが基礎を作ったスタットアーブシステムを改良し続けて現在に至る

秘密主義とメダリオンのパフォーマンスから、他のクオンツファンドに対して圧倒的な優位性を持つイメージがありましたが、意外とそうでもないようです。ファンド初期の失敗はさておくとしても、1990年頃の描写ではDEショー(クオンツファンドの1つ)にシステムでも人材でも劣後しているように書かれています。メダリオンは2007年のクオンツショックを無傷で乗り切ったことで名声を高めましたが、そのとき「ポジションの約1/4はライバルたちと共通」しており、急速に損失が膨らむ中、シモンズの決断でポジションをクローズしたことにより難を逃れたとのこと(システムに従わなかったことで部下に責められたそうです)。総じて見るとそのときどきで他のクオンツファンドと同じようなことをやっていて、マーケットデータの品質やオルタナティブデータのボリューム、精緻なリスク管理といったディテイルで差を付けて近年のパフォーマンスを達成しているような印象を受けました。