勝間和代がアナリストだった経験をもとに書いた、財務諸表から会計操作を見つける方法の本。
駄犬にとってはとても良い本で、こういう本が読みたかった、もっと早く読んでいればよかったのにと思いました。前提知識がなくても理解できるように平易に書かれており、より難しい本に進むための第一歩としてよい内容です。ただし、出版がもう10年以上前(2007年)であり、今日では通用しなくなっている箇所があるかもしれません。また、会計操作について書かれた箇所は前半の100ページほどで、後半は財務諸表の読み方の解説となっています(これはこれで参考になりますが)。
本書ではまず、会社の利益には質があるという話がされます。会計上の利益には経営者の裁量によって左右される余地があって、経営者が保守的か攻撃的かというスタンスの違いによって同じ決算でも出てくる数字が異なる。なので投資家としては利益の質を意識して決算を見るべきだし利益の質が低い会社に投資をするのは考え物だよ、云々。そのあとに以下のような会計操作のパターンがあるという内容が続きます。
会計操作のパターン
1. 損益計算書
収益をなるべく前倒しで計上する
得意先に頼み込んで販売したことにする
- 倉庫から出荷すれば売り上げに計上できる(出荷基準)ことから、親密な取引先に「来期に返品してもよいから売ったことにさせて」と頼んで売り上げを立てる
- 値引きをするなどの条件を提示して、来期に発注予定だった注文を今期に発注してもらう
売り上げを融通しあう
まだ提供していないサービスの対価を売上とみなす
- たとえば「5年で1000万」という一括契約を結んだとして、単純計算では1年200万になるところを初年度で500万とか計上する
- 情報システム、英会話スクール、エステサロンなどで使われる方法
費用を先送りして計上する
人件費を資産計上する
- 本来ならば当期の販管費とすべき人件費をB/Sの資産の部に乗せる。無形固定資産のソフトウェアや建設仮勘定、繰延資産の研究開発費などの費目が使われる
費用化を後伸ばしする
- 減価償却の年数をできるだけ長めにする
- 減価償却を定額法でおこなう
- B/Sに乗っている資産を本来なら費用化(減損)すべき状況であっても減損しない。ただしいつまでも会計士をごまかせるものではなく、いつかは費用化を強いられる
引当金を十分に積まない
2.貸借対照表
資産をふくらませる
含み益のある資産を売却する
- 含み益のある資産を売却する
- 土地や建物をリースバックする
資産の評価替え・再分類・オフバランス化
- 組織再編やM&Aにあわせて自社に都合よく資産の分類や評価を変える。土地再評価差金額など
3.連結会計
連結会計
割安に会社を買って連結対象とする
- 自社よりもPERの低い会社を買う。PERの低い会社を連結化しても自社のPERはそれほど下がらないことが多い
- のれんの償却よりも利益の大きい会社を買う
持分変動損益
- 子会社が第三者割当増資をしたとき、その株価を時価として元からもっていた子会社の株式を洗いがえることができる