著者のゆうじさんは日経平均先物を主に売買していた元ディーラーで、「ディーラー時代の24年で30億円を稼ぎ、レジェンドとまで呼ばれている」という経歴。本書は著者の現役時代に起こった大きなイベント、たとえば湾岸戦争や9.11同時多発テロについて、相場の動きとディーラーとしてどう対処したかを振り返るものです。
トレード手法の本というよりは回顧録のような内容で、「このときはこれこれこういうトレードをした」という記述はありますが、一般化されたルールの説明には乏しいです。そもそも感覚的にトレードをする方のようで、うまく言語化できるものでもないのでしょう。
また、過去のイベントで相場がどう動いたかを知るために読むにもイマイチで、著者の印象に残っている場面を繋ぐようにして書かれているため、その時々の相場の動きが時系列で漏れなくわかるわけではありません。値動きも○○円安としか書かれておらず、そのときの日経平均に対するパーセンテージがわからない箇所が多いです。相場の動きをまとめた文章としてはこちらのblogのほうがよいと思います。
文章はこなれていて読みやすく、相場の読み物としては面白いです。ベアリングズ事件や松井証券のオプションの件など、有名な事件がディーラーの現場でどう受け止められたかも書かれています。
以下は読みながら書いたメモ書きです。
湾岸戦争 (1990-1991年)
- 中東情勢の悪化が始まってから開戦までの間は下げた。1990/8/1の3万837円が8/24には2万4165円となり、10/1には2万円を割った。ボラティリティが高まり4%以上リバウンドする日もあった。
- 1991/1/17に多国籍軍がイラクを空爆。この日の日経平均先物は300円安で始まったが、猛烈なリバウンドがはじまりストップ高を付けた。為替は1日で5円円高に振れた。
- 終戦までの間は上げた。開戦時の2万2000円が終戦の3/18には2万7270円を付けた。
- 終戦後は下げた。2万7000円はその後20年経っても更新できない高値となった。
9.11同時多発テロ (2001年)
- 翌日の日経平均先物は前日比マイナス960円で寄り付き、すぐにサーキットブレーカー発動。再開後は前場の引けまでに400円リバウンド。後場に入ると下げてストップ安に張り付いて大引け。
- その後の値動きは乏しく、翌年1月あたりまでは1万円から1万1000円のレンジ相場になった。