駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本] ヤバい決算書 (長谷川正人)

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過去にあった上場企業の破綻、粉飾のケースを取り上げて、開示資料からどのようにその兆候を読み取れたかを解説する本。

取り上げられているのはJALスカイマーク、シャープ、アーバン、江守グループ、東芝オリンパスなど。有名で分かりやすいケースが選ばれているという印象で、マニアには物足りないがこういうのに初めて触れる人にはちょうどよい案配でしょうか。

解説の内容にはとくに斬新な視点もなく、決して深い分析ではないように思いますが、約10年分の業績やキャッシュフローが表になっていたり、バランスシートが図になっていたりと、うまくまとめられており読みやすいです。財務3表がお互いどのような関係にあるかなど、会計の入門書に載っているような内容がコラムとして章の間にはさまっており、初心者向けに前提知識がなくても読めるよう配慮されています。

本書全体を通じてキャッシュフロー計算書を見ることの重要性、特に営業キャッシュフローのマイナスの定常化が危険な兆候であることがどの事例でも繰り返し出てきます。あとは以下のような点がチェックポイントとして挙げられています。

  • 収益性の低下

  • 売上債権の増加

    • 架空の売上を計上した場合、入金はされないので売上債権だけが膨らむ
    • 売上の伸びに比べて売上債権の増加が著しい場合は粉飾の疑いがある
    • 江守グループの事例では、破綻前2年間の売上げの伸びが1.8倍であったのに対し、売上債権の伸びは2倍であった
  • 棚卸資産の増加

    • 期末在庫(棚卸高)をかさ上げすると、その分売上原価を減らすことができる
    • 売上げの伸びに比べて棚卸資産の増加が著しい場合は粉飾の疑いがある
    • アーバンの事例では、破綻前3年間の売上げの伸びが4.3倍であったのに対し、販売用不動産の伸びは13倍であった