駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本]ピーター・リンチの株で勝つ (ピーター・リンチ)

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フィデリティのマゼランファンドで優れた成績を残したピーター・リンチの著書。著名な本で名前はよく見かけるものの読んだことはなくて、1年くらい前に買うだけ買ったものの積ん読になっていて、最近仕事が落ち着いてきてようやく読みました。もっと早く読めば良かった。

本書でもっとも重要なのは「自分が消費者として接している会社の株を買いましょう」「自分に理解できない事業の会社は避けましょう」というメッセージでしょう。ぼく自身、土地勘のあるIT業界の会社よりも、わかりやすいストーリーのある(そして自分がよく知らない業界の)会社に魅力を感じがちで、振り返ると実際にそういった会社のポジションを取ることが多いです。自分の知っている業界だと、その会社の問題点もよくわかるし、アラが見えやすいんですよね。知らない業界だとその会社の良い点だけが見えがちなんだと思います。

銘柄を選ぶための考え方として書かれている企業の分類方法や13のルールも有用なもので、出版は30年ほど前になりますが、今でもほぼ価値を失っていないです。ただ取り上げられている事例は日本の読者には馴染みがないものが多く、いまでは破綻している企業が賞賛されていたりします(トイザらスなど)。

6つの分類

低成長株
  • 成熟した産業に属する会社、かつては急成長株だったが限界に達して停滞してしまった会社
  • 多くの会社は最初から低成長株だったわけではない。電力会社は今日では低成長株だが、1950年代から60年代にはGNP成長率の2倍以上の成長を続けた。70年代に入って成長が鈍化して低成長株になった。アルコアが成長株として扱われていた時代もあったし、鉄道株が成長株で自動車株は得体の知れないベンチャーと思われていた時代もあった
  • 値動きが小さいこと、配当が高く安定していることが特徴
  • ピーター・リンチのファンドにはあまり組み込まれない
優良株
  • 成熟した産業に属するが低成長株を上回る成長を続ける会社。コカコーラ、P&Gなど
  • 利益が期待でき、不況に強いという特徴もある。ピーター・リンチのファンドに組み入れられている
急成長株
  • 年に20~25%成長する小型株
  • 成長する産業の会社とは限らず、そうでないことのほうが多い
  • 経営、資金繰りなど、急成長株に特有のリスクがある
  • 低成長株になったら株価はたたき落とされてしまうため、いつ成長が止まるか、どれだけの資金をその成長に賭けるべきかを見極めることが重要
市況関連株
  • 売上と利益が循環的に上下する企業の株
  • 具体的には自動車、航空、鉄鋼、化学など
  • 大きくて有名な会社という理由で優良株と混同されがちで、不注意な投資家が安全と信じて買って損をする
  • タイミングがすべてで、いつビジネスが落ち込み始めるか、立ち直るのかを知らなくてはならない
業績回復株
  • 業績不振から立ち直ろうとしている会社の株
  • 潜在的に倒産のリスクを持つ
  • たまに出る業績回復株の大当たりは大変な利益をもたらす
資産株
  • 何らかの資産を保有している会社の株
  • 現金、不動産が一般的だが、他にも特許、採掘権、サービスのユーザ、ブランドなども会社の保有する資産である

投資対象選別の13項目

(1) 面白みのない、または馬鹿げている社名

退屈な名前だと市場の注目を集めることがなく、株を安いうちに買うチャンスが生まれる

(2) 変わり映えのしない業容

(1)と同じ理由。(1)と両方揃えば最高

(3) 感心しない業種

汚れ仕事、ぱっとしない事業の会社はアナリストが取り上げないため、株を安いうちに買うチャンスが生まれる

(4) 分離独立した会社

大会社から分離した会社の場合、大会社は独立した会社が失敗すると評判が悪くなるので、成功させようというインセンティブがある 独立後の経営陣の能力によっては、コスト削減や新戦略の導入で収益性が向上することがある

(5) 機関投資家保有せず、アナリストがフォローしない会社
(6) 悪い噂の出ている会社

廃棄物処理産業、カジノ経営の会社にはマフィアとの繋がりなど悪評があったが、それゆえ株価は割安に抑えられていた

(7) 気の滅入る会社

(3)と同じ理由。葬儀会社など

(8) 無成長産業であること

無成長産業には成長産業のような激しい競争がない。無成長産業でもシェアを伸ばせれば会社は成長する

(9) ニッチ産業であること
(10) 買い続けなければならない商品
(11) テクノロジーを使う側であること
(12) インサイダーたちが買う株

会社の人間が自社株を買っているのは、その会社がうまくいっている何よりの証拠

(13) 自社株買戻し