駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本]楽天IR戦記 (市川 祐子)

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楽天のIR担当を2005年から2017年にかけて務めた著者が時系列に業務内容を振り返る本。個人投資家からは見えづらい機関投資家とのコミュニケーションが具体的に書かれておりおもしろく読みました。TBS買収(未遂)などの大きな出来事で社内がどう動いたかも描写されています。

「公募は企業の負担が大きいため第三者割当増資が選択されやすい」と以前読んだ本に書いてあって、そのときはピンとこなかったのですが、本書で公募増資のために海外機関投資家向けのロードショーをやったときの記述を読むと実感が湧きます。短い期間でニューヨーク、ボストン、ロンドン、エジンバラと回って1日に7件もアポイントを入れ、時間が足りないからランチミーティングもやってタフな三木谷社長疲労困憊。本書を読むと社長に限らず役員クラスまでもIRに大きな時間を割いており、楽天のような資金需要の大きな企業だからということもあるんでしょうが、上場企業が投資家とのコミュニケーションにいかに大きな労力を費やしているかわかります。

他にも機密情報が何者かのリークで漏れて、新聞記者を押さえている間に急いで開示を出したり、業績予想を非開示にしたら東証に呼び出されて出すように要求されたり(でも結局は出さずに通した)、ところどころ面白い場面がありました。

ところで著者はIRのミッションを「株を買ってもらうこと」と言い、接触した機関投資家について彼らは株を買ってくれた、買ってくれなかったとたびたび記載します。自分は「自社の姿を的確に伝えること」がミッションなんだと漠然と思っていたんですが、そうじゃないんだなあと気付かせてくれたのが本書の一番の価値でした。

IRは、「株を買ってもらうこと」を日々の目標としており、究極の目的は資金調達であると私は考えています。

市川 祐子. 楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方 (Kindle の位置No.12-13). 日経BP. Kindle 版.