駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本] 基本から本格的に学ぶ人のためのファイナンス入門 (手嶋 宣之)

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ファイナンス理論の入門書2冊目。数式を用いて簡潔に説明していくスタイルで、1ページあたり3つくらい数式が出てきます。ただし数学的な難しさはなく、高校数学がわかっていれば理解に苦労することはおおむねありません(たまに複雑なやつが出てきますが)。

内容としては現在価値と割引率の考え方から入って、資本コストやCAPM、WACCの説明をして、資本構成(MM命題や最適資本構成)、現代ポートフォリオ理論に進みます。企業価値評価の話題には乏しく、DCF法という言葉は一度も出てきません。

構成は『企業価値評価【入門編】』の第一部に似通っていますが、本書では例として債権が多用されます。株式と債券で半々くらいの登場頻度でしょうか。割引債(ゼロクーポン債)やデュレーション、再投資リスクといった言葉がほとんど説明なく使用されます。他にもファイナンス理論を金融機関のリスク管理にどう応用するかという話が出てきたりして、著者のバックグラウンドを感じさせます。債権の知識がある程度ないと本書は読みづらいでしょう。

ファイナンス理論の基本的なトピックを簡潔に解説した本で、ページ数も200程度とコンパクトにまとまっており、要点だけ手早く知りたい人には良いでしょう。ただ株式投資との接点に乏しい書きっぷりなので、株の投資家が興味を持って読みすすめるのはしんどいかも。『企業価値評価【入門編】』のほうが優れた本であると思いました。