駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本] タートル流 投資の魔術 (カーティス・フェイス)

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リチャード・デニスのトレード学校「タートルズ」出身者の著書。タートルズに応募してリチャード・デニスの面接を受けるところから始まって、タートルズでの出来事や自身の投資手法について書かれています。

タートルズでリチャード・デニスに教わったことがそのまま書かれているというよりは、基本的には著者自身の考え方が書かれており、そのなかで「リッチ(リチャード・デニス)はこう言った」「リッチの教えはこうだった」というように言及がなされます。タートルズで教えていた内容については最後に「ボーナス章」として短くまとめたものが載っているくらいで、タートルズについて知りたいのであれば他の本が適切かもしれません。自分がこれまでに読んだ本では『ザ・タートル』がタートルズで教えていた内容をそのまま書いていました。

手法は一言でいうとルールベースのトレンドフォローで、本書からタートルズの思い出話をすべて取り除いたらそのままシステムトレードの中級者むけの本になりそう。たとえばバックテストの問題点(オーバーフィッティングなど)について1章を使って説明していますし、どのようにリスクをコントロールすればドローダウンを許容範囲内に抑えられるかというテーマに多くのページが割かれています。

本書の内容をきわめて大雑把に書くと、まず、著者はエッジ(正の期待値)のあるトレードを積み重ねることが重要であると述べた上で、「トレンドフォロー派にとってのエッジの源は、支持線、および抵抗線が突破されたときにトレーダーたちが示す、認知の仕方のギャップにある(p.105)」として、ブレイクアウトでポジションを取るトレンドフォローの手法にエッジがあると述べます。売買の判定にはATR、ボリンジャー、移動平均などのテクニカル指標を用います。システムを作ったらバックテストをおこない、取引結果の分布を出して分布の形状やR倍率で評価します。

リスク管理についてはシャープレシオなどの基本的な考え方を説明した上で「わたしたちは誰しも、損失への許容度は違うし、リターンへの期待度も違う。だから、すべての人間に普遍的に訴える尺度などひとつもない(p.134)」と述べ、自分なりのリスク管理基準を作ることを勧めています。著者はMARレシオ、ドローダウン、CAGRなどを組み合わせて使用しているとのこと。

全体的に、たった1つの方法を採り上げてこれが正解だという書き方はせず、システムトレードで使われる道具を幅広く紹介してどのように扱えばよいかを説明しており、具体性には乏しいです。また、書かれている内容が日本株にどれだけ適用できるかもよくわからず。テクニカル分析でやっているなら参考になる点があるかもしれません。