バフェットに近しい人物がバフェット的なバリュー投資の方法を解説した本。企業をコモディティ型と消費者独占型の2つに分類し、消費者独占型の企業を割安なタイミング(相場全体の暴落や一時的な業績の悪化)で買って長期保有することを薦めています。
消費者独占型とは、より知られた表現でいうとモートがあるとか、競争優位性があるとか、そういうニュアンスの言葉です。本書では1/3ほどの文量を割いて、消費者独占型をどうやって見つければよいか説明しています。この部分はよく整理されており、とてもわかりやすく書かれています。とくに、
今ここに、何十億ドルもの資金と、これはと思う50人からなる経営チームを集める力があるとする。その力を利用すれば、その企業に太刀打ちできるような新会社を作り上げることが可能だろうか。(p.37)
という判断基準は正鵠を得ていると思いました。資本や人材だけでは乗り越えられないような、ブランドや知財、許認可、ネットワーク効果が必要だということですね。
気になる点としては、現在の相場環境では消費者独占型企業を割安に買えるチャンスが乏しいこと、本書に厳密に従うとほとんどの企業はコモディティ型に分類されてしまい、選択肢が狭まることでしょうか。たとえば最近の相場で選好されている半導体や海運といったセクタの企業は買えなくなります。
内容としては『千年投資の公理』と重複する部分が多く、『千年投資の公理』がより網羅的で分析的に書かれているのに対して、本書は要点を絞ってシンプルに書かれています。最初に読むなら本書のほうがよいでしょう。
消費者独占型企業の見分け方(定性的)
- もしその企業が株主資本を全て配当で投資家に還元したと仮定して、後になにがしかの価値が残るだろうか
- 今ここに、何十億ドルもの資金と、これはと思う50人からなる経営チームを集める力があるとする。その力を利用すれば、その企業に太刀打ちできるような新会社を作り上げることが可能だろうか
- コンビニやスーパーなどで絶対に取り扱わないとならない商品を持っているか
- インフレを価格に転嫁できるか
消費者独占型企業の見分け方(定量的)
株を買うタイミング
- 相場全体の暴落。消費者独占型企業は暴落後1~2年のうちに元の水準に戻る
- 景気後退
- 戦略ミスや事故などの特殊要因
- 企業の構造変化。合併や組織再編