クロード・シャノン、ジョン・ケリー、エド・ソープといった数学者たちの成果がどのようにギャンブルに応用されたか、また彼らがどのようにギャンブルに取り組んだかを描いた本。競馬のノミ屋、ブラックジャック、ルーレット、株式投資といったギャンブルが扱われています。
株式投資の本というよりは数学の本です。株について触れた箇所は全体の2割くらいですし、あくまで数学に軸足を置いた書き方になっていて、登場人物がどのように株に取り組んだかはそれほど深く書かれていません。株式投資に活かそうと思って本書を読むと肩透かしになるでしょう。教養書としては面白く、数式もほぼ出てこないため前提知識がなくても読めると思います。ただし類書の『ウォール街の物理学者』のほうが株式投資にフォーカスした内容となっており、株をやる人にはお薦めです。
個人的にはケリー基準を紹介した箇所を興味深く読みました。数式を使わず概念的な図表で説明しているため導入としてはわかりやすく、ケリー基準に対してどのような批判があったかも述べられており、触りくらいしか知らなかったので学びがありました。
リスクの係数(fractional kellyなどと呼ばれるらしい)とリターンについてグラフのような関係があり、グラフの頂点となる点において最大のリターンが得られる(オプティマルf)。係数を頂点よりも小さくすることにはリスク軽減の効果があるが、大きくしても良いことはない。株式投資に使われるイメージはなかったのですが、確率分布で結果が決まるようなゲームでも扱うことができて、システムトレードでは使っている人がいるようですし、仮想通貨botでもポジションサイズの調整に使われているようです。