駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本] ファイナンス理論全史 (田渕直也)

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ファイナンス理論の歴史を概観した本。UKIさんがTwitterで推薦していたのを見て読みました。ルイ・バシュリエによるランダムウォーク理論の提唱からスタートして、効率的市場仮説、現代ポートフォリオ理論、行動ファイナンスといったテーマが扱われます。

単にキーワードを列挙してその内容を説明するのではなく、なんらかの理論が登場し、理論への批判がなされ、それを乗り越えるような新しい理論が出てきて……という経緯を追っていく書き方になっており、ファイナンス理論の大きな流れが掴めるようになっています。一つ一つの理論への説明には深入りせず、数式もほとんど使わずに書かれています。

これまでにファイナンス理論やクオンツ系の本を何冊か読みましたが、本書はそれらの下敷きとなるもので、本書を先に読んでおけばよかったと思いました。たとえば以前読んだ本では期待リターンの算出方法についてCAPMの説明をして終わっていて、CAPMはどうも単純化されすぎているように思えて疑問が残ったのですが、本書ではCAPMに厳しい前提条件が置かれていること、その欠点に対してファーマ=フレンチのモデルが提唱されたことが述べられていて腑に落ちました。

著者はわかりやすくかみ砕いて説明する能力が非常に高く、他の著書も読んでみたいと思いました。金融関連の入門書を何冊か書いているようです。しかし毎回そうですがファイナンス理論の本を読むと「実際のところインデックスファンドを買うのがベストなのでは?」と感じて個別株をやる意欲を削がれる気がしますね……。