駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

2021年の振り返り (1) 今年の相場、来年どうしよう

今年の相場

2021年は一年を通じて低ボラティリティのレンジ相場が続き、リスクイベントが起きてもすぐにリバウンドして元の水準に戻ってくるやさしい相場でした。ただしTOPIX+10.4%に対してマザーズ指数-17.4%と乖離が大きく、グロース株の中には一年を通じて延々と下げ続けるものが多く、触る銘柄によって明暗が分かれた年でもありました。

この1年なにがあったか思い返そうとしても、激動の2020年と違って強く印象に残っていることがない。コロナで一喜一憂してたな、11月からの下げはけっこうキツかったな、というくらい。ともあれトピックを絞っていくつか書いてみます。

決算絡みの値動きについて

流動的にゲームのルールが書き換わっていく感じで、決算絡みのポジションは対応力を求められました。

決算モメンタムの参加者が増えたためか、小型株が強い決算をだした直後に買いが集中し、3日もすれば潮が引くように出来高が減って株価も下げていくという値動きが頻繁に見られました。大型株であれば相対的に足の遅い機関投資家がモメンタムを作ってくれることがあるけれど、個人しか参加しない小型株では決算発表直後にピークが来るとそれで終わりになってしまいがちです。

事前に推測が利く好決算の場合に、先回りした参加者の売りが大きすぎて寄りから滑落していく値動きもよく見られました。12月ではプレミアアンチやERIHDの決算がこのパターンでした。中身を見ないで売上や利益の数字だけで決算後に買いに行くタイプの人だと2021年は勝てないどころかカモにされてやられていたんじゃないか。

モメンタムが出ることを狙って決算後に買うポジションの期待値は少なくとも小型株については下がっているように思われ、決算モメンタムというやり方では勝ちづらくなっている印象があります。サプライズ性のあるすばらしい決算だからといってモメンタムが出るわけでもなくて、需給の読みが以前よりも重要になっています。

IPOについて

最近になって公募価格が安すぎる、新規上場企業が正当な価値で資金調達できていないという議論がされるようになり、IPOの公募価格が以前より高い水準で決まるようになりました。12月IPOの公募価格も全体的に高く、上場直後の株をバーゲンプライスで買う機会は見つけづらくなっています。

www.nikkei.com

反面、やりやすくなったと感じる点もあります。以前のIPOセカンダリでは、初値から値上がりしていく当たりの銘柄はランダムに選ばれ、その企業の事業内容の善し悪しとは無関係に決まるような印象がありました。しかし12月IPOでは事業内容の良いものがちゃんと選ばれており、初値から値を上げている湖北工業、三和油化工業、CS-Cなどはファンダを見られる参加者であれば(少なくとも12月IPOの中では相対的に)良いと考える企業ではないかと思います。

今後もIPOに短期の資金が集中する風潮は続くだろうし、長期保有はしんどい時価総額でも短期トレードなら触れるわけで、12月の傾向がこれからも続くのであればまだまだIPOセカンダリにはチャンスがありそうです。12月は公募価格割れで初値を付ける銘柄が珍しくなくなり、公募価格の水準が落ち着いてくれるとよいのですが。

海運ブームについて

夏から秋にかけてTwitterでは誰もが海運株を持ってるみたいな雰囲気になりました。以下の記事では海運株の出来高の3割が個人投資家であったと書かれています。年末のパフォーマンス報告を見ても、今年は海運株で利益の大半を得た個人が多かったようです。オールドエコノミーの大型株に一極集中というのは今までみたことのなかった光景で驚きました。

moneyworld.jp

自分はというと海運株を触り始めた時期も遅く、知識のない業種で自信を持ってポジションを保有できず、行けそうなときに決算をまたぐくらいで、プラスにはなったもののわずかな利益で終わってしまいました。3月ごろにはTwitterで船賃の高騰がちらほら話題になっていたのに、そのときに調べずスルーしていたことが悔やまれます。順張りでポジションを取るのが精神的に苦手で、ああいうのに素直に乗れないのが自分の課題だと思っています。

来年どうしよう

ハイグロース株にとって厳しい状況は来年も続きそう。2000年のITバブル崩壊になぞらえる意見をよく見ますが、あのときは切り下がったバリュエーションは元に戻らず、その後株価が回復した企業も業績の成長に従って再評価されていったと理解しています。今回もおそらく同じことが起きるだろうし、雰囲気だけで時価総額が膨らんでいた企業の株価がそう簡単に戻るとは思いません。

2021年の後半からPERの高いものをポートフォリオから意識して落とすようにして、年末時点ではポートフォリオのPERは平均16.4となっています。2022年もハイグロース株はよほど自信がなければポートフォリオに入れないようにするつもりです。

2022年はコロナで悪影響を受けた企業の多くが平常時の業績に復帰する年になり、コロナからの業績回復を期待して取ったポジションを手じまうタイミングになります。ポートフォリオにもいくつか残っており、業績の回復が止まるところでうまいこと手じまいたい。オミクロン株については今後感染が広がることがあっても社会への脅威にはならないと見ています。ただ、あまり心理的な受容が進んでいないように見えて、「ただの風邪」とはいかないまでも数ある疾病の1つとして冷静に受け止めるような風潮になかなかならないのは不安に感じます。

現在のポートフォリオ内需(特にIT企業)に偏っていて、自分は油断するとIT企業ばかり買ってしまうので気づくとこうなっていることが多いですが、もう少し製造業の割合を増やしたい。半導体不足からの回復が見込まれる自動車、電気機器、精密機器、工作機械といったセクタでポジションを作りたいと思っています。2月の決算シーズンで入れ替えるイメージでいます。

日本株全体については岸田政権のムーブなど不安な点もありつつ、どちらかというとポジティブに見ており、上場企業全体で10%前半の増益が見込まれる中で大崩れはないだろうと思っています。ただしボトムアップなスタイルでやっており、あまりマーケット全体の動きに対して予断を持ったり、それに投資行動を左右されないようにしたい。

moneyworld.jp

2021年の後半は仕事が忙しくて株に使う時間が相当減ってしまい、仕事と株の両立に苦労しました。いまは株をやっているほうが楽しいんで、株にリソースを割きたいんですね。そろそろ遊んで暮らせるくらいの資産額になっていて、プログラマーの仕事を自分の人生にどう位置づけるか悩ましい。今年考えたいテーマであります。