システムトレードのインタビュー本。インタビュイーは15名で、ファンドマネージャがもっとも多く、他にシステム開発者(開発したシステムをファンドや証券会社に売ってる人たち)や個人トレーダー。トム・デマーク、ラリー・ウィリアムズなど著名な人も含まれています。『マーケットの魔術師』シリーズっぽく見えますが著者はジャック・ シュワッガーではないし、原著の題名(Market Beaters)も違います。インタビューの仕方も、著者のアート・コリンズは誰に対してもテンプレートに沿って同じ質問を順番に訊いていく感じで、相互の比較はしやすいですが面白さという点ではやや落ちます。
インタビュイーのやっていることはかなり似通っており、多くの人はテクニカル指標を使ったトレンドフォローで、複数の先物市場で分散したポジションを取ります。これが出版時点(2004年)の主流であったのか、単に著者の人脈が片寄っているだけなのかはよくわからず。自分がこれまでに読んだ中ではタートルズのやり方に近く、タートルズから20年くらい経ってもあまり変化していないんだなという印象を持ちました。機械学習(遺伝的アルゴリズム)を使う人(ゲーリー・ハースト)や、ファンダメンタルズ&センチメントの指標も取り入れてファクター分析のようなアプローチを取る人(マイク・ディーバー)も居ますが少数派です。
手法をそこまで詳細に述べない人が多いこともあり、1人1人の手法を子細に読み込むというよりも、共通する点・しない点を分けて見ていくのがよさそうです。たとえばトレンドフォローを採用するという点はほぼ全員が共通していますが、市場によって異なるシステムを使い分けるか、同じシステムを使うかという点では意見が分かれます。おそらく前者は勝つための必要条件だけど、後者はそれほど重要ではないんでしょう。「どのテクニカル指標を使うかは重要ではない」ということも複数人が述べており、実需などを背景にマーケットがトレンドを示すときに、確率的にトレンドの最初のほうでエントリーできればそれでよくて、あとはリスク管理で失敗しなければ利益を得られる、みたいなノリなんだと思いました。
全体的に比較的長めの期間でトレンドが出る市場を対象にしており、個別株の投資にそのまま役立つ点は乏しいように思われます。著者のまとめの中で「株価指数ははっきりしたトレンドを作らない」(だからシステムトレードには不向きというニュアンス)と書かれていますし、それは個別株でも同じ傾向があると思います。システムトレードをやる人は直接参考にできるのかもしれませんが、裁量で個別株をやる投資家にとってはあくまで考え方を学ぶための本という感じ。あとは、こういう戦略でポジションを取る参加者がマーケットにいて、大きなボリュームの資金を動かしているんだ、というイメージを掴むことができるのも本書の価値かもしれません。