駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本] 賢明なる投資家 (ベンジャミン・グレアム)

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バリュー投資の本家筋、ベンジャミン・グレアムの著書。かの名高い『証券分析』がAmazonのセールで2640円になってて、でも1000ページもある大著なので読み通せるか不安があり、そうしたら『賢明なる投資家』がKindle Unlimitedに入っていたのでまずはこちらからと思って読みました。

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株式投資の本かと思ってたらそうでもなく、まず望ましいポートフォリオの配分について論じて、続いてそれぞれの金融商品について個別に見ていくという構成。金融商品としては債権と株に大半のページが割かれており、あとは投資信託ワラントに言及があります。株について書かれた箇所は全体の半分にも満たないです。

第一版の出版は70年も前ですが、バリュー投資のエッセンスが詰まっており、現在でも価値を失っていないと思います。投資と投機を区別すること、分散投資をすること、企業の価値を分析して高すぎる株価で買わないこと、安全域を確保することなど。驚いたのは効率的市場仮説や現代ポートフォリオ理論といった、今日の標準的な理論が織り込まれているように見えること。たとえば投資信託について以下の記述があります。

平均以上のファンドというのは存在するのだろうか? そして投資家は優れた成果を得るべくそうしたファンドを選択できるの だろうか? もちろんそれは望むべくもない。

ただ、あくまでも考え方を学ぶための本であって、日本の読者が2019年にこの本に書かれていることをそのまま実践するのは好ましくないと思われます。本書で述べられるポートフォリオの配分は「株式(個別株)と債券を50%ずつ保有し、マーケットの状況によって配分を微調整する」という素朴なものです。金融商品の選択肢が今よりもはるかに少ない時代に書かれており、投資信託の章にインデックスファンドのことは一言も出てこないし、REITコモディティETFも当然出てきません。資産の全額を国内に投資することを前提に書かれていますが、今であれば世界の株式や債権に分散投資できるインデックスファンドがいくらでもあります。

最後に本書に書かれていないことについて。まず、売買のタイミングに関わる記述には乏しいです。買うタイミングについては「高すぎなければいつ買ってもよい」くらいの書き方ですし、売るタイミングにはほとんど言及されません。また、いわゆるバリュートラップについて何も述べられていません。企業価値を見抜いて割安に買うことが重要であり、それさえできれば後は何とかなるというくらいのスタンスであるように思われます。