駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

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「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[投資本] 狂気とバブル (チャールズ・マッケイ)

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人間の愚行、とくに集団心理の引き起こした事例についての挿話集。原著が発行されたのは1852年で、長く読みつがれてきた本です。

中世ヨーロッパで起きた出来事をテーマに沿って蒐集し、ややゴシップ的に味付けしてジャンルごとにまとめたという感じ。バブルについて述べたページは全体の15%ほどに過ぎず、中心的な人物を据えてその周辺で起こったことを面白おかしく著述するというスタイルで、分析的な記述には乏しいです。

たとえばミシシッピ計画であればジョン・ローを中心人物に、彼の生い立ちから始まって殺人を犯してヨーロッパ大陸に逃亡したくだりを述べ、フランスで摂政の知遇を得て銀行を設立し、ルイジアナ州の独占貿易権を獲得して、云々。そうしてようやくバブルが始まったなと思ったら、民衆がいかにしてジョン・ローに取り入ろうとしたかという話が延々と続いて(発行される株をだれに割り当てるかという権限をジョン・ローが持っていたらしい。今でいうIPOの割当みたいなもの?)、気づいたら南海泡沫事件の章が始まっている。

というわけで本としては面白いんですが、過去に発生したバブルについて知見を得て投資に活かそうという目的で読むなら、明らかに『新訳 バブルの歴史』を読んだほうがよいでしょう。本書ではミシシッピ計画、南海泡沫事件、チューリップバブルの3つの事例を取り上げていますが、これらは『バブルの歴史』でも扱われています。

本書でいちばん面白かったのは錬金術師の章でした。中世の錬金術師というと現代で言うところの化学者で、金を錬成しようと学究に身を捧げた人たちというイメージがありましたが、まあたしかにそういう人たちもいたけれど、時代を下ると詐欺師だらけになってきて、二重底のツボやら中が空洞になった杖を使って王侯貴族をだまくらかして金品をせしめるんだけど、たまにバレて投獄されたり死刑判決を受けたりします。他にも中世にあらわれた預言者、祈祷師、磁気療法士といった怪しい人たちについてたくさん書いてあって、そういうのがお好きな人にはおすすめです。