過去に発生したバブルを取り上げて紹介した本。主として以下の事例が扱われています。
- チューリップバブル (1630年代、オランダ)
- 南海泡沫事件 (1720年代、イギリス)
- 鉄道ブーム (1840年代、イギリス)
- 大恐慌 (1929年、アメリカ)
- 日本のバブル経済 (1980年代、日本)
『狂気とバブル』に比べるとより分析的で、当時の経済状況や政治の動きについても述べられており、起こったことが俯瞰的にわかるように書かれています。ただ、各々の事例を紹介することに主眼が置かれており、そこから一般的な傾向や法則を取り出そうという記述は乏しいです(最初の方にちょっとあるくらい)。事実を淡々と叙述するスタイルで、経済史の教科書を読んでいるような感じ。
本書の内容からバブルの共通点を取り出すとこんな感じでしょうか。2017年から2018年にかけての仮想通貨はまさしくバブルのテンプレートをなぞっていたと本書を読んで思いました。
投機の対象が相場の成熟に伴い拡大する
- チューリップバブルでは当初「センペル・アウグストゥス」などごく限られた品種が投機の対象であったが、徐々に無銘の球根まで高値で取引されるようになった
- 南海泡沫事件では事業の実態のない会社までが設立され投機の対象となった
- 仮想通貨バブルの末期にはaltcoinが物色されて、株クラにも得体のしれないコインやトークンを買い漁るひとがたくさんいた
イノベーションやフロンティアの魅力が喧伝される
- ミシシッピ会社や南海会社では新大陸との貿易による利潤が謳われた
- 1820年代のイギリスでは南米大陸の鉱山ブームがあり、ある会社の設立趣意書には「会社が採掘権を持つ地域には金が豊富にあり泥から洗い流すだけで金が採掘できる」と書かれた(が、実態はなかった)
- イギリスの鉄道ブームではメディアが鉄道の未来を煽り、「鉄道時代の到来は人類の進歩の速度を永遠に変えるだろう」などと言われた
信用で取引できるようになる
- 南海会社では、ブームの途中から、20%の申込金を払えば株を購入できるようになった。残金は16ヶ月かけて分割払いで払えばよかった
- イギリスの鉄道ブームでは「スクリップ」という仕組みがあり、鉄道会社の株を買うものは最初に10%だけ支払い、残りは鉄道建設が始まってから支払えばよかった。鉄道株を担保に金を貸す銀行もあった
- 仮想通貨バブルでも最初は現物取引しかなかったが、直に業者がレバレッジ取引を提供するようになった
それにしても時と場所が変わってもバブルの参加者がやっていることは変わらないし、相場の歴史を学ぶことには価値があると思わされます。後世の投資家にとってビットコインはかつてのチューリップと同じようなものに見えるのか、それとも金やプラチナみたいな地歩を築いているんでしょうか。
市場に集まる人々や彼らのやり方は昔も今も変わらない。使う言葉とテクノロジーが新しくなっただけである。
エドワード・チャンセラー. 新訳 バブルの歴史 ──最後に来た者は悪魔の餌食 (Kindle の位置No.4982-4983). パンローリング株式会社. Kindle 版.