証券会社や機関投資家が貸株を融通する相対取引の市場について書かれた本。金融業界の実務担当者向けに書かれており、バックオフィスで使われる帳票のサンプルが載っていたりします。
1999年発行と古いのですが、基礎的な知識を得るには有用な本です。個人投資家が信用取引で建玉を建てたり貸株サービスで現物株を貸し出したときに、証券会社の裏側でなにが起きているのかは見えづらい部分ですが、おぼろげにでもイメージができるようになります。反面、発行から20年も経つとシステム化も進んだだろうし、今では本書の内容と食い違っている部分も多いだろうとも思います。貸株の市場規模も当時よりもかなり大きくなっているでしょう。ネット証券がこぞって貸株サービスを提供するようになり、貸株は以前より身近になりましたし、ぜひ改訂版を出してほしい。
著者は短資会社の所属で、おそらくブローカーとして貸株市場に参加しているものと思われます。そのため貸株の借り手と貸し手がどのような意図で取引を行うのかという点は記述が乏しいです。特に貸株を借りる側の機関投資家がどういう株を借りて、どうやって(空売りに)使うのかは本書を読んでもわかりません。
貸株市場
- 証券会社や機関投資家が参加する相対取引の市場
- 日本株の貸株市場の規模はおよそ10兆円。内訳はエクイティ・レポが8兆円、ストック・レンディングが2兆円
- ブローカーを通すことが多い。機関投資家が相手と直接取引をするとポジションが相手にわかってしまうため
貸株取引
- エクイティ・レポ(ジェネラル取引)とストック・レンディング(スペシャル取引)
- エクイティ・レポ:銘柄を特定しない取引。「一部上場の銘柄で一定基準を満たすものを100億円」のように大まかな条件で取引する。貸借料率は小さく0.01%が相場
- ストック・レンディング:特定の銘柄を貸借する取引。貸借料率は銘柄のニーズ次第
- コーラブル取引とノンコール取引
- コーラブル取引:貸借期間中、いつでも借入者が借りていた株を返還できる権利がついた取引
- ノンコール取引:貸借期間が終わるまで返還できない取引
- ターム取引とオープンエンド取引
- ターム取引:契約締結時に取引決済日(エンド日)を定め、中途解約はできない取引
- オープンエンド取引:契約締結時に取引決済日(エンド日)を定めず、貸出者・借入者のいずれかが貸借期間中に指定する日をエンド日とする取引
- 借入者は株券を借りるときに担保(現金)を差し入れる。担保には担保金利(TIBOR+α)が付く
証券金融会社
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- 株券調達