上場を目指す企業の経営者や担当者に向けて、上場準備ですべきことや上場までの流れを解説した本。IPOの裏側で起こっていることを大まかに知っておきたいと思って読みました。
初心者向けに教科書的な知識をまとめたもので実務寄りの記述に乏しく、これを読んだだけではいまいちイメージが掴めないところがありますが、上場までのフローをざっくりと掴むのには有用でした。上場準備というのは思ったより大がかりなプロジェクトで、上場の意思決定をしたタイミングで主幹事証券会社と監査法人を選定し、場合によっては印刷会社やその他のBPO先まで決めてたくさんの人が関わって進めていくものなんですね。IPO担当者を求人サイトで募集したり、株式を100分割くらいしたり、非上場会社が出すIPOのサインとされているものがありますが、それらがどのあたりのフェーズなのか推測するのに役立つかもしれません。
上場申請の3年前
上場の意思決定
プロジェクトの編成
監査法人によるショートレビュー(予備調査)
上場申請の2年前、1年前
ショートレビューの不備項目に対応
- 不備項目に基づいて規程等を作成
- 最低でも1年の運用実績が求められる
上場申請書類の作成着手
- ドラフトを作成し、主幹事証券会社、監査法人のレビューを受けて改善
- 事業計画なども上場審査で必要となる
監査
- 上場するためには金融商品取引法に準ずる監査が直前の2期必要となる
定款の変更
- 上場に際して株式譲渡制限の廃止、株主名簿管理人の設置などの変更が必要となる
引受審査
- 主幹事証券会社による審査
- 上場の前期から開始し上場申請の前後まで行われる
- 審査の基準や進め方は主幹事証券会社によって異なる
- 公開適格性、コーポレートガバナンス、経営状態、業績の見通しなどが審査対象となる
上場申請の年
上場審査
- 証券取引所による審査
- 前期の決算が株主総会で確定した後に申請することができる
- 東証の場合、本則市場では3ヶ月、マザーズおよびジャスダックでは2ヶ月が審査期間
- 書面による質問、実地調査、公認会計士ヒアリング、社長面談などが行われる
- 形式要件、実質審査基準(JPXのWebサイトで公開されている)に従って審査される
公開価格の決定
- 一般的に(1)想定公開価格の決定, (2)ロードショー実施, (3) 仮条件価格の決定, (4) ブックビルディングの実施、という流れで公開価格を決定する
- 想定公開価格は主幹事証券会社とIPO準備会社で決める
- 仮条件価格はロードショーの結果から決める
- ブックビルディングの結果を踏まえて最終的な公開価格が決まる
- ロードショーでは約2週間で20~30社の機関投資家を訪問する。1日あたり3~5件、1件辺り時間程度の面談をおこなう。
上場へ
- 有価証券届出書、目論見書の作成
- 上場承認後約1ヶ月で公募・売り出しが完了する