駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[今週のトレード] 2021/3/12

今週の資産推移は+6.9%(+970万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+2.9%、マザーズ指数が+3.4%と指数に対してアウトパフォームでした。

グロースもバリューも仲良く上がる平和な1週間で、株ブログを巡回しても今週は一息付けた人が多かったようです。先週-11.48%だったTSLAが今週は+16.02%となり、VIXは落ち着いたものの値動きの荒さはさほど変わっていない印象があります。木曜日に東証業種別指数で海運が+8%を付けるなど、セクタ間のローテーションが続いています。ここ2ヶ月ほどでブライダルや空運まで買われており、コロナからの業績回復の織り込みも最終コーナーに近づいているように思います。

www.nikkei.com

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ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 150,346,267円
  • 前日比 -533,726円 (-0.35%)
  • 月初比 +8,256,354円 (+5.81%)
  • 年初比 +24,328,348円 (+19.31%)
現物

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信用

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先物

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[今週のトレード] 2021/3/5

今週の資産推移は-1.0%(-145万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+1.7%、マザーズ指数が-3.8%と指数に対してまちまちでした。

先週の流れを引き継いで、ボラティリティの高い相場でグロース株がたたき売られる1週間でした。週間騰落率でTOPIXとマザース指数が5%も乖離していますが、アメリカでもダウ+1.8%、ナスダック-2.1%、SOX指数-4.8%と温度差が激しいです。S&P500 Mapを1Weekで見るとテスラが一番下げていて、コロナショック後の極端な相場の終わりを感じます。落ち着くまではグロース株、とくにバリュエーションが無茶なやつは新しくポートフォリオに入れないようにしようと思っています。

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今週の取引

3028 アルペン(-1,399,377)

手じまい。3/4に開示された2月の月次が全件同月比91.4%と弱くて売りました。

3月の月次が前年同期比100%で出てきたとしても3Q単体の売上が約485億で、粗利率が40%(前期3Qから1.3%改善した数字)とすると粗利が194億。販管費は最近はブレるのでどうなるかよくわからなかったのですが、3Q単体で営業赤字になる可能性が高そうに思われ、そうなると今期2Qまでの業績はコロナの一時的な恩恵だったと受け取られそう。3Q決算発表までの間はポジションを外そうと思いました。3Q決算通過後に買い直すか考えたい。

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9797 大日本コンサルタント(-)

新規に買いました。ここは中堅の建設コンサルタントで、今年の7月に同業のダイヤコンサルタント経営統合を予定しています。経営統合のスキームが2/12に開示されたのですが、内容を見るとちょっと面白い点があって、経営統合を買いでまたいでみようと考えました。大日本コンサルタントの株主にとって有利なスキームになっていると思ったんですね。

(※以下、経営統合のスキームについて書きますが、専門家ではない自分の知識で理解したものであり、誤りを含む可能性があります。確実な内容を知りたい方は開示資料を参照してください。もしおかしなことを書いていたらコメント欄で指摘いただけるとありがたいです。)

DNホールディングス(持ち株会社)の株数がどうなるか

今回の経営統合は共同株式移転方法で行われ、両社の発行済株式の全部を新たに設立する持ち株会社「DNホールディングス」に取得させます。大日本コンサルタントおよびダイヤコンサルタントの株式に対して、DNホールディングスの株式がそれぞれ1:1で割り当てられます。

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面白い点というのは、経営統合の過程において、ダイヤコンサルタント株式の大部分が消却されることです。大日本コンサルタントとダイヤコンサルタントの発行済株式数を単純に足し合わせると12,360,000株となります。しかし、DNホールディングスの発行済株式数は最終的には8,010,000株となり、大日本コンサルタントの発行済株式数7,660,000株に対して5%の増加に留まります。

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ダイヤコンサルタントの発行済株式4,700,000株は以下のように取り扱われます。

  1. 2,060,000株: 大日本コンサルタント三菱マテリアルから購入する(ステップ1)。その後の統合プロセスにおいてDNホールディングスの株式が割当交付される(ステップ2)が、最終的に消却される(ステップ3)
  2. 2,640,000株: ダイヤコンサルタント三菱マテリアルおよびその他株主から自己株式取得を実施する。そのうち150,000株を従業員持株会に割り当て、残りを実務上消却可能な範囲で消却する(ステップ1)

ただし2.については、2,640,000株は上限であると記載されており、ダイヤコンサルタントによる自己株式取得が上限まで実施されなかった場合は、大日本コンサルタントが最大1,770,000 株を追加で株式取得するという条件が付いています。また、その場合に追加取得分が1.と同様の扱いになる(最終的に消却される)かは明記されていません。

そのあたり不明瞭ながら、ダイヤコンサルタントの発行済株式は従業員持株会の350,000株(元々保有していた200,000株と2.で割り当られる150,000株の合計)を除いて消却され、DNホールディングスの発行済株式数は最終的には8,010,000株となる(大日本コンサルタントの発行済株式数7,660,000株と従業員持株会の350,000株の合計)と理解しました。

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この数字が正しいことの根拠、というか検算としては、開示資料に「共同持株会社が本株式移転により交付する新株式数(予定)」が10,070,000株であると記載されています。これは前出のキャプチャのステップ2時点での株式数であり、内訳は以下の通りであると考えられます。

このうち2,060,000株はステップ3で消却されるため、10,070,000株から2,060,000株を差し引くと8,010,000株となります。

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DNホールディングス(持ち株会社)の業績等がどうなるか

経営統合完了後のDNホールディングスがどういう見栄えになるかを考えます。まずP/Lですが、大日本コンサルタントとダイヤコンサルタントの前期の業績を足し合わせると、

  • 売上 28,956百万
  • 営業利益 2,424百万
  • 経常利益 2,453百万
  • 純利益 1,692百万

となります。発行済株式数8,010,000株としてEPS211円で、3/5の終値1,080円に対してPER5.1となります。建設コンサルタントは評価の低いセクタですが、もっともPERの低いEJHでもPER7.1で、ざっくりPER10くらいが平均値でしょうか。PER5.1はさすがに割安と言える水準に思えます。

大日本コンサルタントの今期業績予想+ダイヤコンサルタントの前期業績だと純利益1,272百万でEPS159円、PER6.8となり割安感が薄れますが、大日本コンサルタントは業績予想が保守的で、たいてい業績予想を上回って着地する会社なので、実態としてはPER5.1のほうが近いと考えます。

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ただし、以下2つの要因でのれんが発生する可能性があり、その金額と償却期間によっては、償却負担で利益が大きく下押しされるおそれがあります。

B/Sについては不確定要素が多く、のれんの件もふくめて経営統合完了後にDNホールディングスがどういうB/Sになるかは自分には判断が付きませんでした。大日本コンサルタント三菱マテリアルから購入する株の価格は非開示ですし、ダイヤコンサルタントのB/Sも詳細はわかりません。大日本コンサルタントはキャッシュリッチな会社ですが、今回の経営統合で財務はいくらか痛むことになるでしょう。ただその程度がどれくらいなのかはフタを開けてみないとわからないと思います。

配当については、ここは配当の決め方について定量的な基準を示しておらず、有報の配当政策には「当社の利益配分に関する方針は、将来の事業展開と経営体質強化のために必要となる内部留保を確保しつつ、株主の皆様に対する安定的な配当の継続を基本としております」と記載されています。現在30円の配当が増配されることを期待したいですがこれも現時点ではどうなるかよくわからないです。

7/12に大日本コンサルタント上場廃止となり、7/14にDNホールディングスが東証二部にテクニカル上場します。DNホールディングスは6月決算のため上場直後に本決算発表の時期になります。本決算発表前に業績予想と配当予想を出してくれると安心感がありますが、本決算がいきなり出てきて配当金額もそこで開示されるパターンになりそうな気がします。

長くなってきたのでまとめると、

  • ダイヤコンサルタントとの経営統合が7月に完了するとPERなどの指標がすごい割安な感じになる(はず)
  • 足下の事業環境も良好である(豊富な受注残があり、今期2Qの決算短信の定性情報には「新規受注を抑制している」との文言があり仕事を請けきれない状況と思われる)
  • 国土強靱化や高速道路リニューアルプロジェクトの恩恵を受ける会社で目先の業績も安心感がある
  • バリュー株が選好される相場の流れにも合っている

くらいが買う根拠です。DNホールディングス上場の7月までは少なくとも保有し、その後はどこかで水準訂正されてくれたら売りたいと考えています。

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 140,641,993円
  • 前日比 -1,033,639円 (-0.73%)
  • 月初比 -1,447,920円 (-1.02%)
  • 年初比 +14,624,074円 (+11.60%)
現物

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信用

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先物

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[投資本] タートル流 投資の黄金律 (カーティス・フェイス)

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『タートル流 投資の魔術』の著者が書いたメンタル本。『ゾーン』や『デイトレード』と同じ系統の本で、トレードにおいて人間らしい感情とどのように向き合い、恐怖を克服したらよいのかが書かれています。タイトルに「タートル流」と入っていますが、ただ著者の考え方が縷々と書かれているだけで、タートルズとはもはや何の関係もありません。

著者は人間がリスクを恐れるのは本能的なものであると述べ、「不確実性にたいするそういう機制や心理的な反応は、原始時代にはそれなりの意味があったが、現代ではむしろ足かせになることが多い(p.27)」として、トレードにおいてもリスクに対する恐怖心を乗り越えなくてはならないと言います。

また、不確実性は「情報の不確実性」と「無秩序の不確実性」の2つに分けることができ、前者は取り除くことができるが後者はそうじゃなくて、「ほとんどの決断にかかわってくる不確実性を、全部取り除く方法はない(p.31)」と言います。そして何やら理屈をこねたうえで、われわれはリスクを受け入れて明鏡止水の境地に至るしかないんだよ、というような趣旨のことが述べられます。

本書で主張されることは『ゾーン』のそれに近いですが、『ゾーン』のほうがはるかに説得力に富み、トレーダーの心理をうまく描写しており、この手の本を読むのであればそちらを読んだ方がよいです。必要性のよくわからない著者の個人的な挿話がいくつも差し挟まれる冗長な構成で、最後まで読みすすめるのもしんどい感じでした。

[投資本] タートル流 投資の魔術 (カーティス・フェイス)

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リチャード・デニスのトレード学校「タートルズ」出身者の著書。タートルズに応募してリチャード・デニスの面接を受けるところから始まって、タートルズでの出来事や自身の投資手法について書かれています。

タートルズでリチャード・デニスに教わったことがそのまま書かれているというよりは、基本的には著者自身の考え方が書かれており、そのなかで「リッチ(リチャード・デニス)はこう言った」「リッチの教えはこうだった」というように言及がなされます。タートルズで教えていた内容については最後に「ボーナス章」として短くまとめたものが載っているくらいで、タートルズについて知りたいのであれば他の本が適切かもしれません。自分がこれまでに読んだ本では『ザ・タートル』がタートルズで教えていた内容をそのまま書いていました。

手法は一言でいうとルールベースのトレンドフォローで、本書からタートルズの思い出話をすべて取り除いたらそのままシステムトレードの中級者むけの本になりそう。たとえばバックテストの問題点(オーバーフィッティングなど)について1章を使って説明していますし、どのようにリスクをコントロールすればドローダウンを許容範囲内に抑えられるかというテーマに多くのページが割かれています。

本書の内容をきわめて大雑把に書くと、まず、著者はエッジ(正の期待値)のあるトレードを積み重ねることが重要であると述べた上で、「トレンドフォロー派にとってのエッジの源は、支持線、および抵抗線が突破されたときにトレーダーたちが示す、認知の仕方のギャップにある(p.105)」として、ブレイクアウトでポジションを取るトレンドフォローの手法にエッジがあると述べます。売買の判定にはATR、ボリンジャー、移動平均などのテクニカル指標を用います。システムを作ったらバックテストをおこない、取引結果の分布を出して分布の形状やR倍率で評価します。

リスク管理についてはシャープレシオなどの基本的な考え方を説明した上で「わたしたちは誰しも、損失への許容度は違うし、リターンへの期待度も違う。だから、すべての人間に普遍的に訴える尺度などひとつもない(p.134)」と述べ、自分なりのリスク管理基準を作ることを勧めています。著者はMARレシオ、ドローダウン、CAGRなどを組み合わせて使用しているとのこと。

全体的に、たった1つの方法を採り上げてこれが正解だという書き方はせず、システムトレードで使われる道具を幅広く紹介してどのように扱えばよいかを説明しており、具体性には乏しいです。また、書かれている内容が日本株にどれだけ適用できるかもよくわからず。テクニカル分析でやっているなら参考になる点があるかもしれません。

[今週のトレード] 2021/2/26

今週の資産推移は+5.7%(+765万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが-3.3%、マザーズ指数が-4.1%と指数に対してアウトパフォームでした。

2月の資産推移は+11.7%(+1491万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+3.1%、マザーズ指数が+0.4%と指数に対してアウトパフォームでした。

金曜日に日経平均が4%下げました。朝起きたらHYGが急落、VXXの出来高急増、ゴールド&BTCも下がってて強力にリスクオフしてて、こりゃやばいかなと思ってアルペン日通システムプレミアアンチを減らして短期のポジションも手じまってポジションサイズを2000万くらい落としました。最近はこういう展開になってもすぐにリバウンドして元のトレンドに復帰してしまうし、全体のポジションサイズから1割減らしたくらいであまり大きく動かしてはないですが、今回はなんか嫌な雰囲気があります。原因としては金利の上昇や中国の引き締め観測が取り沙汰されているようです。

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今週は指数を大きくアウトパフォームしています。アフターコロナが買われる流れでフロンティアインターナショナルが今週+15.6%、大日本コンサルタント+12.1%、スペースマーケット+11.5%、キャリアDC+8.5%、シダックス+7.3%と上げてくれました。今週の資産推移への寄与としてはこの5銘柄で+5.2%、先物ヘッジ売りが+1.5%、お気持ち程度でやっている個別株ショートが+0.3%で、残りが全部ひっくるめて-1.3%。

2月はリバーサルの相場で、グロースとシクリカルが売られてバリューとコロナでダメージ受けてるセクタが買われました。今のポートフォリオはそこそこアフターコロナに寄せており、グロースは控えめでシクリカルはほぼゼロという構成で、うまいこと恩恵を受けられた感じです。決算シーズンもありましたが短期ポジションの寄与は今月+2.2%で、おおむねポートフォリオのパフォーマンスで勝てた月でした。

今週の取引

6730 アクセル(-)

新規に買いました。パチンコ業界で旧規則機がこれから大量に撤去されて、その入れ替え需要でパチンコ、パチスロの機械に特需があるという話があって、なにかポジションを取ろうと少し前から思っていて、いくつか比較検討して直近の決算も見てこれにしました。

まずパチンコ業界の状況についてまとめると、今年度は緊急事態宣言によるパチンコホールの営業自粛もあり、パチンコ、パチスロの機械の販売は低迷しています。fieldsのFact Bookからデータを引用すると、今年度3Qまでの販売台数はパチンコ60.4万台、パチスロ26.4万台、合計86.8万台です。今年度全体としては、矢野経済研究所が予測を出しており、それによるとパチンコ75万台、パチスロ35万台で合計110万台とされています。また、アクセルの決算説明資料に記載されている今年度の販売台数予測(おそらく会社が独自に予測したもの)は合計120万台となっています。3Qまでの推移を見ても、今年度は合計110~120万台あたりに落ち着くように思われます。

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これに対して来年度どれだけの機械が売れるというと、あまり信頼性の高いデータソースは見つけられなかったのですが、遊戯日本という業界紙の記事によくて170万台という記載があります。170万台売れても2019年度の水準に戻るに過ぎず、メチャクチャ売れるというわけでもないのですが、少なくとも今年度の販売台数からは回復して、ざっくり4割とかそれくらいかな、プラスになるというイメージでしょうか。

また、旧規則機の撤去台数についてはサミーの決算説明資料に四半期単位での推計値が記載されています。オリンピックの開催可否もまだわからず不確定要素のあるデータかと思いますが、来年度にパチンコ69.7万台、パチスロ60.0万台、合計129.7万台の撤去が予定されています。また、1Q期間の撤去台数がもっとも大きく、パチンコ45.6万台、パチスロ33.8万台、合計79.4万台と、撤去の6割強が1Q期間に行われることがわかります。撤去台数のすべてが新台に置き換わるわけではない(中古遊技機の証紙発給枚数を見ると、最近では半分くらい中古台が設置されている)ため、撤去台数がそのまま販売台数に対応するわけではありませんが、ここから来年度1Qにかけて需要のピークが出てくると考えてよさそうです。

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それでどの株を買うか考えると、まず思い浮かぶのはパチンコ、パチスロの機械を作っているメーカーです。しかしメーカーは機種がヒットするかどうかで業績が左右され、自分は最近パチスロを打たなくなって客付きや人気の肌感覚が無くなっているし、メーカーは避けようと思いました。それよりはメーカーに部材やサービスを提供している会社のほうが手堅そうです。パチンコ業界は裾野が広く、部材やサービスにも大きな市場があります。以下のキャプチャはアクセルのWebサイトから拾ってきたものです。データが古いため金額としては今はもっと小さくなっているはずですが、相対的な規模感は掴めるかと思います。

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アクセルはファブレス半導体メーカーで、パチンコ、パチスロ向けのグラフィックスLSIを主力製品としています。グラフィックスLSIというのは、画像処理やサウンド処理、LED制御など、機械の演出に必要となる機能を1チップにまとめた半導体です。最近のパチンコ、パチスロはほとんどの機種に液晶画面が付いていて、チャンスになると手の込んだ演出が流れますが、そのために必要となるものです。

パチンコ、パチスロ向けのグラフィックスLSIはニッチな市場で、アクセル(AGシリーズ)、ヤマハ(GPシリーズ)、東芝でほぼ寡占しています。アクセルはトップシェア(開示資料によると50%程度)を持っています。機械の販売台数におおむね比例する形でグラフィックスLSIの販売も伸びることが期待でき、さまざまなメーカーで採用されているため個別のメーカーや機種の売れ行きに左右されることもありません。

アクセルは開示資料に受注残を記載しています。拾えるだけの数字をグラフにプロットすると以下のようになります。2021Q3の受注残は4,721百万となっています。また、受注から納入までの期間は平均3.5ヶ月(シェアードリサーチのレポートより)であり、リードタイムからすると1~2四半期後の決算で足下の受注残が売上計上されると思われます。

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ここは資産バリュー株でもあります。時価総額85.4億に対して現預金+売掛金で78.7億あり、負債を差し引いて69.0億とキャッシュリッチな企業です。また、仮想通貨や自動運転などテーマ性のある新規事業をやっていて、たまにキラキラ系のリリースを出して株価が跳ねたりするので、そのぶんの期待値が薄くあると思っています。

リスク要因としては以下のようなものが考えられます。受注残が豊富で目先の四半期決算はまあ大丈夫でしょうが、その先には不安を感じるところがあります。

  • コロナでパチンコホールの体力は落ちていると思われ、台の入れ替えに予算を割けない可能性がある。新台よりも中古台が選択され、来年度の販売台数がさほど伸びないことが考えられる
  • 旧規則機の撤去期限は過去に延長されており、再度延長されて需要が後ろ倒しになる可能性がある
  • メーカーの業績が良くない状況で部材の再利用が進んでいるらしく、販売台数が伸びてもアクセルの製品への需要につながらない可能性がある

目先の特需に期待するポジションで、長期保有する意思はないので、向こう1年くらいでタイミングを見つけて手じまうつもりです。

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 142,089,913円
  • 前日比 +1,366,884円 (+0.97%)
  • 月初比 +14,914,123円 (+11.73%)
  • 年初比 +16,071,994円 (+12.75%)
現物

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信用

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先物

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[投資本] 天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す (エドワード・O・ソープ)

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元祖クオンツエド・ソープの著書。幼少時代の神童っぷりから始まる自叙伝が最初の2/3ほど、自身の投資哲学が残りの1/3ほどという構成です。5歳で幼稚園から小学校1年生に飛び級、その後も卓抜した知的能力を発揮し続けて、大学の先生をやりながらカジノに乗り込んで荒稼ぎし、巨大なクオンツファンドを運営し市場平均を遙かに上回るパフォーマンスを上げるという、ずっとマリオのスター状態みたいな人生が描かれます。

株式投資の観点からは、エド・ソープがマーケットで勝てるようになるまでの過程と、ファンドで行われた投資手法の説明を興味深く読みました。

エド・ソープはブラックジャックのカードカウンティングを研究し、カジノで実践して大きな利益を上げます(他にルーレットとバカラにも取り組んだ)。しかし顔が知れ渡るにつれてネバダ州のカジノから警戒され、あちこちで出入り禁止を言い渡されるようになります。ときには身の危険を感じる出来事もあったそうです。そこでソープは「地上最大のカジノ」たるウォール街でギャンブルの知識を試そうと考えます。

ソープは1964年の夏から投資の本を濫読し勉強をはじめますが、クオンツ的なアプローチに辿り着くまでに、いくつか素人っぽい失敗をしています。

  • 新聞の記事に有望と紹介されていたエレクトリック・オートライトという株を買ったところ、40ドルの買値から20ドルまで値下がりした。そのまま塩漬けにして40ドルに戻ったところで手じまった
  • 銀の需給が逼迫すると見て銀先物を買ったところ、しばらくは価格が上昇して含み益を得たが、その過程でピラミッディングをしてレバレッジを上げていたため、天井を打つとすぐに強制決済となった

これらの経験からはアンカリング効果、リスク管理の重要性、エージェント問題について学んだといいます。また、このときに読んだ本や雑誌のほとんどは紙くずだったとも書かれています。

そうしているうちに1965年に転換社債のパンフレットから転換社債と現物株の裁定取引のアイディアを得ます。転換社債は債券とコールオプションを組み合わせた商品で、オプション部分の価値を正確に算出できれば、割高な転換社債のショートと現物株のロングでサヤを取れるというわけです。この方法はうまくいって年に25%の利益を出し、以後のソープは一貫してクオンツ的なアプローチを用いるようになります。

ソープはこれまでに2つのファンドを運用しました。1つ目は1969年に設立されたプリンストン・ニューポート・パートナーズで、多くの出資者から資金を集め、一時期は10億ドルを超える資産を運用していました。ファンドはすばらしいパフォーマンスを継続したものの、1987年の強制捜査をきっかけに解散に至ります。2つ目は1994年に設立されたリッジライン・パートナーズで、ソープとトレーダー1人の2名体制で運営される小さなファンドでごく限られた出資者の資金を運用し、2002年に解散しました。

本書ではそれぞれのファンドについて、投資手法の概要が説明されています。プリンストン・ニューポート・パートナーズについては、10億ドル規模の巨大ファンドであったため多様な方法を組み合わせていたようで、以下の5点で運用されていたといいます。上巻のp.533から引用します。

  • 転換社債ワラント、オプションを分析するコンピュータ・モデルとトレーディング・システム。これを使ってすでに日本のワラント市場で最大のプレイヤーになっていた
  • 統計的裁定。普通株を分析するコンピュータ・モデルとトレーディング・システムで、ティッカーをリアルタイムで200万ドルかけた私たちのコンピュータ・センターに供給し、自動的に注文を生成し、取引所のフロアに送る。2.4メートル四方のパーティションから、私たちは1日に100万株から200万株の注文を出した。これは当時のニューヨーク証券取引所の日次出来高の1%から2%に相当する
  • ソロモンブラザーズから私たちに加わった金利の専門家のグループ。同社にいるとき、彼らはほんの8ヶ月のあいだに会社に5000万ドルの利益を上げさせた
  • MIDAS。この指標による株価予測システムのおかげで、私たちは広範な資産運用ビジネスに参入できた
  • OSMパートナーズ。『ファンド・オブ・ヘッジファンド』で、ほかのヘッジファンドに投資する

リッジライン・パートナーズではスタットアーブをやっていたようで、下巻19章でそのおおまかな内容が説明されています。自分の理解でまとめると以下のようなものであったようです。

  • 米国の大型株1000銘柄を投資対象とする
  • ソープの開発したモデルから1000銘柄の適正価格を算出する
  • 現在の株価が適正価格から一定以上乖離した銘柄を見つけたら、割高なものをショート、割安なものをロングする。ロングとショートを組み合わせてマーケットニュートラルとする(ベータヘッジ)
  • 株の回転率としては2週間に1回すべて入れ替わる

モデルについては断片的なことしか記述がないのですが、ファンダメンタルズ、テクニカル両方のデータを使用し、その具体例としてPER、PBR、時価総額が挙げられています。また、2002年にファンドを閉じた理由として、似たようなスタットアーブを使うファンドが増えたために2000年と2001年のパフォーマンスが落ちたことを挙げています。

クオンツ初期の歴史を描いた本としても読めますが、それよりも天才エドソープがマーケットで無双するなろう小説のノリで読む方がずっと楽しめます。読んでいてワクワクするすばらしい本でした。

[今週のトレード] 2021/2/19 日経平均3万円

今週の資産推移は-6.4%(-919万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが-0.3%、マザーズ指数が-3.5%と指数に対してアンダーパフォームでした。

日経平均が3万円を超えました。年始に27000円台を推移していたころは3万円はかなり遠い水準という感覚で、早々に3万円を超えるとは思っていなかったです。今週は指数に負けていますが、ポートフォリオの決算後の値動きが全体的に悪かったのが大きく、グラフィコが決算翌日にS安(売却済み)、富士山マガジンが今週-19.0%、マツオカ-10.2%、ユーザベース-9.5%、BuySell-7.6%となり、この5銘柄でざっくり今週-550万ほど寄与しています。大型株に片寄って買われる相場で、小型株が相対的に弱かったことも原因と思います。

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今回の決算ギャンブルでは48のポジションを取って36勝12敗、確定損益の合計は+256万となりました。今回はどちらかというと難しい決算シーズンで、プラスで終われたのは決算シーズン中の地合がおおむね良かったおかげであり、取ったポジションの決算後の反応だけならトントンくらいだったという感覚です。所感を箇条書きで書いておきます。

  • 決算ギャンブルで同じようなポジションを取る参加者がますます増えているという印象を持ちました。見栄えの良い決算が出る、もしくは過去の開示パターンから特定の日に上方修正が出ると予想できる銘柄で、決算ないし上方修正の翌日に10%くらい値を下げてしまうケースがよく見られました。自分の取ったポジションではメガチップスとIPSが該当します。とくに小型株で流動性に乏しい銘柄だと、決算ギャンブルの参加者がいっせいに売りにきたときに吸収できるだけの買い注文が出てこなくて、決算の内容以上に値下がりすることが多いように思われました。

  • Twitterのタイムラインを見ていても、決算ギャンブルの参加者は同じような銘柄に注目する傾向があり、たとえば今回ならダブルスコープやウインテストの決算またぎが混み合ったポジションになっていたように見えました。結果的にはこれらのポジションは避けるのが正解でした。

  • 大型株のほうが決算への反応が複雑で、小型株はわかりやすい(決算の見た目に素直に反応しやすい)という傾向があると思います。今回はその傾向が薄れて、小型株も決算への反応がより複雑になったと感じました。個人投資家のレベルが上がって、決算の内容が事前に織り込まれるようになっているのかなと思いました。

こうやって書いても自分の感じ方だけが根拠の印象批評になってしまうので、定量的に決算への反応を評価して次に活かせたらよいのですが。何とかやれる方法がないかなと考えています。

今週の取引

4930 グラフィコ(+2,263,570)

手じまい。2/12発表の2Q決算の内容が悪く、売上がQonQで減収となり、同時に出た上方修正も修正幅がもの足りないものでした。

ドラッグストアのPOSデータやECサイトのランキングなどいくつかのデータから主力製品のオキシクリーンが売れていると思っていて、2Qはもっと上の数字を期待していたのですが、オキシクリーンの売上だけ見てもQonQでマイナスと当てが外れた形になりました。なぜ期待した決算にならなかったのか開示資料を見ても読み取れず、グラフィコのP/Lでは卸に出荷ないし納品したタイミングで売上計上されるはずなのでドラッグストアの店頭で売れるのとタイミングのずれがあったのかなと思いましたがこれも裏付けは取れず。ここは季節性で2Qの業績が強く、3Q決算は2Qまでの数字に比べて落ちる見え方になるはずで、相変わらず信用買い残も多く(発行済株式数の13.6%)、ここで手じまいました。

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3688 CARTA HOLDINGS(-)

新規に買いました。前身のVOYAGEがITエンジニア界隈でプレゼンスのある会社で、良いエンジニアを抱える技術力の高い会社という認識を持っており、以前保有していたこともあります。2/12に発表した本決算の内容を見てもう一度買ってみようと思いました。

今期の業績

ネット広告の会社はいずれもコロナショックで業績に影響を受けました。CARTAも例外ではなく、前期の業績を見るとパートナーセールス事業が減収減益となっています。

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パートナーセールス事業は顧客にナショナルクライアントが多く、彼らの広告出稿意欲がコロナで低下したことで業績が悪化しました。この点については決算説明会の書き起こしに「9月ぐらいから緩やかに回復傾向にある」とあり、2回目の非常事態宣言についても「一部の広告主の予算縮小などもございますが、昨年と比較すると影響はかなり小さくなっている状況」とあります。

パートナーセールス事業は代理店(メディアレップ)で、コストに占める人件費が大きく固定費の割合が高い事業です。売上の回復が利益の伸びにつながりやすく、今期の利益の回復が期待できます。また、同じ電通グループであるセプテーニを含む同業他社を見ても直近の業績は回復傾向にあります。

CARTAの中計では今期EBITDA45億の計画となっており、これに対して今期のガイダンスをEBITDA50億で出してきたのも今期の業績への自信の表れと思います。

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電通グループの再編

実現の可能性は低いものと考えますが、電通グループの再編への期待があります。電通グループのWeb広告事業はCARTAの他に電通デジタル、セプテーニなど複数の会社に分かれており、機能的にも重複があります。電通は本決算にあわせて「国内事業における構造改⾰の実施および費⽤計上の⾒込みに関するお知らせ」という開示を出し、国内事業を4つの領域に再編する方針を示しました。また、IRサイトに上がっている決算説明会の書き起こしを見ると、子会社の再編に含みを持たせており、CARTAを含めた再編をやる可能性はあるように思われます。

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ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 134,439,266円
  • 前日比 -886,040円 (-0.65%)
  • 月初比 +7,263,476円 (+5.71%)
  • 年初比 +8,421,347円 (+6.68%)
現物

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信用

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先物

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