駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

駄犬の株ログ

「株価は、恒久的に高い高原のようなものに到達した」(アーヴィング=フィッシャー, 1929年)

[今週のトレード] 2020/11/6 バイデンの勝利

今週の資産推移は+2.1%(+247万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+5.0%、マザーズ指数が+6.1%と指数に対してアンダーパフォームでした。

日本時間4日から大統領選の開票が始まり、開票状況に右往左往する1週間。郵送投票が後から集計されるため4日昼にはいったんトランプが優勢となり(ブックメーカーのオッズが1.3倍くらいになった)、その後バイデンが巻き返す展開。土曜日になってやっとバイデンに当確が出ました。

www.nikkei.com

バイデンが僅差で勝って法廷闘争にもつれ込むというのは下馬評では最悪のシナリオでしたが、マーケットは真逆の反応でリスクオンとなり、金やビットコインまで買われる極端な上げ相場になりました。日経平均も24000円をあっさりクリアして24,325円で引けています。

今週のパフォーマンスは指数に大きめに負けていますが、日経平均先物のヘッジ売りが-438万もマイナスに寄与したのと、ポートフォリオにバリューっぽい銘柄を増やしていたのが足を引っ張りました。金額が大きいポジションではシダックスが今週-0.4%、トーヨーカネツ+1.4%など。来週はポートフォリオの決算が集中しており大事な週になります。今週から地合がよくなり決算への反応も強くなってきましたが、事前に期待が載ってるやつは厳しいことになりがちなのでうまくコントロールしたいところです。

今週の取引

6331 三菱化工機 (-)

新規に買いました。10/30(金)の2Q決算発表前に2500株まで買って、決算内容が期待に添うものだったので2500株追加して5000株にしました。

水素エネルギーが6年ぶりに相場のテーマになってきておりテーマ性があるものをポートフォリオに入れておいても良いかなと思ったこと、足下の業績が好調で豊富な受注残を持っていること、上方修正後でPER8.6&財務もまあまあで割安と考えることが買った理由です。

水素エネルギーについては、ここは水素製造装置『HyGeia』を製造しており、国内の水素ステーションで採用されています。ただし1台当たり1億程度の単価と思われ(あまり強い根拠ではありませんが、水素ステーションの建設コストが4~5億といわれるのと、HyGeia開発時の目標が9000万だったことから)、この製品による業績への寄与は小さいです。

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受注残については、ここは決算短信に受注残を載せないので有報の数字になりますが、前年同期比+43.7%の受注残で今期をスタートしています。今月下旬に2Qの決算説明資料がIRサイトに掲載されるはずなのでそこで最新の受注状況を確認できると思われます。ただ会社は今期受注を絞ると言っており期初の数字より減っている懸念があります。

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あとは前回の水素相場でわりと買われた銘柄で、そのときの類推もまあちょっとだけ期待できるかなと思いました。

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日本では水素ステーションの建設は2010年代から継続的に続いているもののあまり活用されておらず、トヨタのMIRAIも数千台しか売れていない状況です。ただ今年になってトヨタヤマト運輸西濃運輸などと共同で実証実験をやる計画を発表するなど、既存の物流網にFCVを導入する動きが出てきています。

global.toyota

また、菅政権の政策である温暖化ガスの削減に関連して菅総理がインフラ整備の重要性に言及しており、経済産業省「水素・燃料電池戦略ロードマップ」の目標である2025年320箇所という数字もいちおうあって、水素ステーションの建設は今後も継続するものと考えます。

www.asahi.com

たいして成長性のある会社ではないので、地合なりテーマ性なりでうまいこと上がってくれたら欲張らず手じまうつもりです。

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 120,161,723円
  • 前日比 +1,041,728円 (+0.87%)
  • 月初比 +2,466,870円 (+2.10%)
  • 年初比 +30,624,533円 (+34.20%)
現物

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信用

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先物

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[今週のトレード] 2020/10/30

今週の資産推移は-2.5%(-307万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが-2.8%、マザーズ指数が-6.1%と指数に対してアウトパフォームでした。

10月の資産推移は-4.2%(-522万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが-2.8%、マザーズ指数が-4.5%と指数に対してまちまちでした。

EUでコロナ感染が再拡大し各国がロックダウンに向かってリスクオフに。ダウの今週-6.5%、DAXの同じ-9.1%と比べれば日本市場は相対で強いものの相応に下げました。来週はついに大統領選挙です。

www.bloomberg.co.jp

決算シーズンの序盤を通過しましたが今回は厳しい状況で、前回の天国モードに比べると極端にリスクリワードが悪くなっています。全体的に決算の内容自体が悪いわけではなく、コロナの影響を過大に見積もって保守的な業績予想としていた会社がほどほどの数字に修正するための上方修正を山ほど出していますが、発表翌日の反応がしょっぱくてGDで寄ってから下げっぱなしで終わってしまう銘柄も少なくありません。そうでなくても地合が悪いせいで、ポジションを取ってからの数日で5%下げて、決算翌日に3%上げても結果マイナス、みたいになりがちです。

先週末時点で建てていたポジションでいうと、日本鋳鉄管、タツタ電線、エムケー精工、FDKは上方修正を出しましたが、この4つの確定損益を合計するとマイナスになっています。今回は上方修正を当てる難易度は低いですが当てても報われない。そもそも簡単に当たられる上方修正にエッジなんてないという話もあるでしょうが、前回の決算シーズンではそういうやつでも小型株であればたいていは上がってたんですね。これからは数を絞ったうえで直前にポジションを建てるようにします。

興大型株のショートでヘッジするのを試しにやってみようとして、HENNGEとChatworkの売り玉を小さめに建ててみました。ザラバで値動きを見ていると新興市場全体の動きに連動するという点で日経平均先物よりもやはりワークしてる印象を受けるので、とりあえずしばらく維持してみようと思います。

今週の取引

6254 野村マイクロサイエンス (-)

新規に買いました。10/26に出した上方修正がサプライズの度合いが大きく、事前に予想できるものでもなかったと思われ、発表後のモメンタムを取れるかなと考えました。期初の受注残はたしかに良かった(+30.8%, +約30億)のですがそれを加味しても大きな業績の伸びに見えます。開示資料に「韓国の大型水処理装置案件を受注した」と書かれているのはサムスンのことと思われ、ローツェがサムスンからの大型受注を継続的に取れるようになってここ数年業績が伸びていますがああいう成長パターンが連想されないかな。あまり長く持つつもりはないです。

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ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 117,694,853円
  • 前日比 -3,266,031円 (-2.70%)
  • 月初比 -5,214,061円 (-4.24%)
  • 年初比 +28,157,663円 (+31.45%)
現物

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信用

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先物

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[今週のトレード] 2020/10/23 マザーズが9%下げて4%リバる

今週の資産推移は-0.6%(-72万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが+0.5%、マザーズ指数が-4.9%と指数に対してまちまちでした。

木、金の2日間でマザーズが崩れて、1日半で9%下げて半日で4%リバるという激しい値動きになりました。この2日間は売買代金も大きめで、直近の週で外国人投資家がマザーズを売り越しており、個人の信用買い残もコロナショックのボトムから8000億も増加中(17,540億→25,565億)と、どうもよろしくない状況に思えます。マザーズ指数が墜落していくのを見ながらユーザベースとSTIフードを半分に減らして、他にアートスパーク、日本電子材料、BuySellを売ろうか迷いつつそのままにしました。

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こういうのを警戒してポートフォリオからキラキラしたのを減らしておいたつもりでもそれなりに喰らうよな、というのと、この2日で日経平均は-0.5%しか下げずあらためて自分のポートフォリオ日経平均先物でヘッジする有効性とは? というのが自分の所感でした。マザーズの貸借銘柄(HENNGEやChatworkあたり)は今回の急落で素直に下げていたし、外国人投資家がマザーズ売りに転じるならもうマザーズ大型株のショートでヘッジしてもよいような気がします。

今週の取引

7086 きずなホールディングス (-)

新規に買いました。アフターコロナで買いたい銘柄のリストに入れていた銘柄です。10/15の1Q決算発表後に売られて足下では決算発表時から19%下げており、決算の内容はそこまで悪くないしここで買おうと思いました。買った理由は低単価の葬儀(家族葬)に特化していること、経営者に成長意欲があり今後もオーガニックな成長が期待できること、コロナの影響で足下の業績が落ち込んでいるがコロナ収束後には成長軌道に戻ると考えることです。

ここの売上はざっくり「葬儀件数 x 単価」の式に分解できますが、1Qは前年同期比で葬儀件数+14.0%に対して単価が-19.3%と下落したことで減収減益となりました。単価の減少はコロナの影響で遠方からの参列者が減少し、参列者の数に応じて変動する売上(香典返し、料理、供花など)が計画通りに上がらなかったこと、葬儀のプランがより低価格にシフトしたことが原因です。

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それに対して葬儀件数は計画通りに推移しています。既存店は+8.2%と好調ですし、1Qに新規出店した2店舗が8末のオープンであったため新店の寄与がほぼない数字であり、2Q以降にその分の上積みが期待できます。

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つまり、1Qの業績が悪かったのは単価の下落によるものであり、短期的な(向こう1年くらいのイメージ)業績はコロナで落ち込んだ単価が回復するかどうかに掛かっています。

じゃあ単価これからどうなるの? というと、葬祭業界について自分に特別な知見はなく、アクセスできるデータから後追いで見ていくことになります。葬儀業については特定サービス産業動態統計調査で統計が公開されており、Excelを使って葬儀あたりの単価を出すことができます。これを見ると8月時点ではあまり回復していないんですよね。8月に2万くらい下がってるのはコロナ第二波がきてたからだろうから、やっぱり大衆のコロナに対するお気持ちに連動してる数字なんでしょう。コロナの状況次第ながら目先はいくらかは回復していくように思われますが、コロナ前の水準に戻るかは疑わしい(どちらかというと戻らないと思う)、というくらいに捉えています。

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他には競合他社の、とくに決算期がズレているところの単価動向が参考になると思われますが、短信を読むかぎりでは四半期ごとに単価を数字で出してくれるところがなく、とりあえず以下のような表なら作れました。低単価だからといって影響が軽いというわけではないのが興味深いです。ちなみに燦HDは葬儀件数も足下で減少しており、コロナ下でより単価の低い葬儀業者が選択されていることがうかがえます。

きずなHD 平安レイ ティア 燦HD
前期単価(万円) 96.9 140 99.5 118.9
直近四半期単価(万円) 80.9 非開示 前年同期比14.5%減 前年同期比6.7%減

長期的な業績を考える上でも単価の動向がもっとも重要な指標になります。一般葬から家族葬への移行がすすんでいることからここ数年の葬儀単価は下落傾向で、今後も同じ傾向が続くと考えられるためです。葬儀業界の状況については以下の記事がよくまとまっています。

note.com

葬儀件数については会社の中期経営計画に従って伸ばしていけるのではと考えています。1日1組の貸切ホールという業態からも店舗数が概ね葬儀件数に比例するため、店舗数の伸びを見ていくことになります。1Qの決算説明動画によると、今期15店舗の出店計画については目処が立って、すでに来期の店舗を探しているとのこと。また、中期経営計画にはM&Aを織り込んでおらず、M&Aがあればその分が上積みされる可能性もあります。ここはM&Aへの意欲のある会社で、決算説明動画では社長が「M&Aについては私自身がリーダーシップを持って積極的に取り組んでいく」と述べています。

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以上を踏まえつつまとめると、葬儀の単価に業績が左右される会社であり、コロナで低下した単価がどこまで回復するかは不透明だし、長期的にも単価の低下が続く可能性が高いと思われます。ただし単価の推移が低調だったとしても、葬儀件数の増加は今後数年は継続するため、収益性が落ちたなりに業績を成長ペースに戻すことはできるはずです。そうすれば株価も成長性を加味したバリュエーションが許容されることになるでしょうし、今の時価総額44億は十分安いように思われます。

上場している競合企業の中ではティアが家族葬で売っていることや単価からして非常に近いのですが、ティアのヒストリカルPERを見ると20倍程度に評価されている時期が長く、ここも3年後くらいにそのときの利益水準に対して同じくらいに評価されるとすると今の2倍くらいにならないかなあというくらいに考えています。

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 120,762,010円
  • 前日比 -492,936円 (-0.41%)
  • 月初比 -2,146,904円 (-1.75%)
  • 年初比 +31,224,820円 (+34.87%)
現物

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信用

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先物

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[投資本] 基本から本格的に学ぶ人のためのファイナンス入門 (手嶋 宣之)

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ファイナンス理論の入門書2冊目。数式を用いて簡潔に説明していくスタイルで、1ページあたり3つくらい数式が出てきます。ただし数学的な難しさはなく、高校数学がわかっていれば理解に苦労することはおおむねありません(たまに複雑なやつが出てきますが)。

内容としては現在価値と割引率の考え方から入って、資本コストやCAPM、WACCの説明をして、資本構成(MM命題や最適資本構成)、現代ポートフォリオ理論に進みます。企業価値評価の話題には乏しく、DCF法という言葉は一度も出てきません。

構成は『企業価値評価【入門編】』の第一部に似通っていますが、本書では例として債権が多用されます。株式と債券で半々くらいの登場頻度でしょうか。割引債(ゼロクーポン債)やデュレーション、再投資リスクといった言葉がほとんど説明なく使用されます。他にもファイナンス理論を金融機関のリスク管理にどう応用するかという話が出てきたりして、著者のバックグラウンドを感じさせます。債権の知識がある程度ないと本書は読みづらいでしょう。

ファイナンス理論の基本的なトピックを簡潔に解説した本で、ページ数も200程度とコンパクトにまとまっており、要点だけ手早く知りたい人には良いでしょう。ただ株式投資との接点に乏しい書きっぷりなので、株の投資家が興味を持って読みすすめるのはしんどいかも。『企業価値評価【入門編】』のほうが優れた本であると思いました。

[投資本] 企業価値評価【入門編】(鈴木 一功)

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ファイナンス理論およびDCF法の入門書。バリュエーションについて書かれたものを読むと資本コスト、効率的ポートフォリオといった言葉がたびたび出てきます。ググって上っ面の語義だけは頭に入れていても、その意味を正しく理解しているわけではなく、浅くてもよいから体系だってファイナンス理論を勉強しておこうとして読みました。

著者はみずほのM&A部門で企業価値評価の業務に携わっていた経験があり、本書の内容も実務者向けに書かれています。「現場ではこれこれこうしている」「Excelのこの関数を使えば計算できる」といった記述が頻繁にでてきます。また、数式を使わずに平易な日本語で説明してくれることが多いです(それでも2ページに1つくらいは数式が出てきますが)

第一部では現在価値と割引率の考え方から入って、将来のCFを現在価値に割り引くために資本コストを知る必要があり、そのための道具としてCAPMやWACCがあることが説明されます。また、CAMPの背景として現代ポートフォリオ理論にも言及されます。第二部ではモスフードを題材にして、DCF法で企業価値を算出します。財務諸表のこの数字を拾ってきてこう計算して……というのが1つ1つ書かれている詳細なもので、Excelを使って手を動かしてやってみると良い練習になるな、と思いつつ丸1日潰れそうでやっていないです。前提知識を要求しない書き方で文章も読みやすく、初学者が読むのに適した本であると思います。

以下は読んでいて面白かったところのメモです。

最適資本構成

企業は資本を株式と負債で調達するが、負債には節税効果がある。負債の支払利息が法人税の課税対象から控除されるためである。負債があるとCFが節税効果のぶんだけ増加し、よって企業価値も大きくなる。また、負債にはWACCを引き下げる効果もある。

では資本に占める負債の比率が大きいほどよいかというとそうではなく、負債があまりにも大きくなってくると、財務的困難に伴うコスト(Financial Distress Cost)によって企業価値が毀損されてしまう。

そのため、株式と負債の比率(D/E比率)と企業価値には以下のグラフ(本書p.108)のような関係があり、企業価値を最大化するD/E比率がある。これを最適資本構成という。

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ものの本を読んでいて「無借金経営が必ずしもよいわけではありません。適切な負債の規模というものがあるんですよ」という記述を目にすることがままあります。理由はいくつも付けられるでしょうが、その1つとしてこういう考え方があるんだと知りました。

株を始めたてのころは無借金の企業が優れていると思っていて、四季報で有利子負債の数字がデカい銘柄を敬遠していたんですが、本書を読んでいたらああいう初心者っぽい勘違いを引っ張らずにすんだかもしれません。

DCF法の問題点

  • WACCは長期的に資本構成が一定であることを前提としており、資本構成が変化すると見込まれる企業には適さない(負債を本業のCFで返済し、負債比率を低下させる計画の企業など)。このような企業についてはAPV法を用いるべきである
  • 伸び盛りの企業に対する企業価値評価は、長期の予測に不確実性が多いこと、継続価値の算定が不安定になることから、標準的なDCF法を適用するのは容易ではない。実務では複数のシナリオの加重平均を取る、数理的な確率過程を用いるといった対処方法が用いられる
  • 企業買収の実務では買い手や売り手が希望している株式価値がまずあって、その数字に寄せるようパラメタを調整することが珍しくない。マルチプル法、上場企業比較法などの別の方法を使って算出した結果と比較するのはそのため

DCF法のノウハウ

本書第二部に記載されている、実務でこうやってるよという話。モスフードが題材なので外食産業の業態に依存している箇所があるかも。

  • 3~5年の中期予測については、企業の営業計画などを参考に予想されるB/SやP/Lを作成する。予測値は売上個数、商品単価の動向などから積み上げる。その後10年目までの期間については、売上高、利益率、資本回転率などに的を絞って簡易的な予測を作成する。業界団体などの長期予測が参照できる場合は活用する
  • 営業用現金、売上債権、棚卸資産、買入債務といった営業運転資金については、過去の業績分析から売上高に対する比率(回転率)を求めて、それを参考に将来の残高を予測するのが一般的
  • 有形固定資産、とくに償却対象資産については、(1)有形固定資産の減価償却後の残高が、売上高の一定比率になるよう維持する方法、(2)有形固定資産への投資額が売上高の一定割合となるよう維持する方法、の2つがある。(1)は有形固定資産のストック性に着目し、有形固定資産が売上の源泉であるため一定の比率が保たれると考える立場。(2)は業績によって投資金額は左右されるため、売上の一定割合を新規投資に回すと考える立場
  • CFを割り引く税引後WACCは、本来であれば金利水準や資本構成によって毎年変化するはずだが、実務上は一貫して同じ数値を用いることが多い
  • 株主資本コストの推定では、実務ではCAMPが用いられることが圧倒的に多い。また、市場リスクプレミアムは過去の株式、債権の利回り実績から推定する方法、ベータにはMSCI社の発表するBarraベータもしくは過去の株価収益率から回帰分析で求めた数値を用いることが多い
  • 有利子負債資本コストの推定では、長期の社債における流通利回りを参照するのが一般的。その企業の最長期間の市場利回りから、日本国債との利回りとのスプレッドを求め、スプレッドをリスクフリー金利に加算する

[今週のトレード] 2020/10/16

今週の資産推移は-4.5%(-567万)でした。同期間のマーケットはTOPIXが-1.8%、マザーズ指数が-1.7%と指数に対してアンダーパフォームでした。

EUでコロナ感染が再拡大しており、今週に入ってロックダウンの動きが出てきたことで欧州株が下落中。日本のコロナ感染者数は足下で落ち着いておりこのまま推移してくれるとよいんですが。今週は200社ほど決算発表がありましたが、前回の決算シーズンに比べると弱めの反応で、自分の「この数字なら翌日これくらいかな」という見立てより下に行くケースが多かったです。前回の決算シーズンがボーナスステージだったので感覚がゆるくなっているのもおそらくあって、次回はそれに引っ張られないように意識したほうがよさそう。

www3.nhk.or.jp

今週は指数に大きく負けています。ポートフォリオではガイアックスが今週-15.1%、STI-13.9%、シダックス-13.1%と下げました。シダックスポートフォリオで最大のポジションサイズで、1銘柄で-266万も寄与してます。ここ1ヶ月くらいシダックスの板にわかりやすいアルゴがいて、上値を叩いて陽線だらけのチャートを作るというのが続いていたんですが、今週からいなくなったんですね。それをきっかけに出来高も減って株価も下がっていって、あれは売りのサインだったんだなあと学びました。アルゴがいなくなった時点で半分でもいいからショート入れて両建てにしていれば結果的にはよかった。キャプチャ1枚目、2枚目がアルゴがいたときのチャートで、3枚目がここ2週間の値動きです。

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自分には板読みの能力がほぼないので、シダックスのアルゴはきわめて規則的な動きなのでさすがにわかったけど、普段はアルゴが怪しい挙動をしていても気づいてないと思います。短期のトレーダーで勝ってるひとはああいうのも売り買いの判断に使っているんでしょうね。

ポートフォリオ

サマリー
  • 評価額合計 121,480,736円
  • 前日比 -3,954,402円 (-3.15%)
  • 月初比 -1,428,178円 (-1.16%)
  • 年初比 +31,943,546円 (+35.68%)
現物

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信用

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先物

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[投資本] エナフン流VE投資法 (奥山 月仁)

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バリュー投資(収益バリュー)の考え方を、GEの経営手法「バリューエンジニアリング」を用いながら説明した本。著者の前著とおおむね似通った内容で、前著をすでに読んでいると得られるものは少ないかもしれません。前著の内容を深堀りしつつ、著者自身の過去のトレードを事例に実践方法を説明するという体裁になっています。

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本書で提示されるバリューエンジニアリングの式がこれ(p.51より引用)で、企業の本質的価値と株価のギャップが上昇可能性であり、たとえば本質的価値3000円の株がマーケットで2000円の株価で取引されていれば、

V = (I / P) - 1
  = (3000 / 2000) - 1
  = 0.5

で0.5倍ぶんの上昇可能性があるよということが表現されています。本質的価値が向上するか、現在の株価が下がれば、そのぶんギャップが拡大して上昇可能性も大きくなるというわけです。

こうやって書いてみるとなんだか当たり前のような気がしますし、わざわざバリューエンジニアリングを引き合いにしなくてもふつーにこの式を書けばよかったのでは? と読んでいて感じましたが、バリューエンジニアリングは著者がサラリーマンの仕事をする中で影響を受けた手法らしく、株式投資に持ち込みたかったんでしょうか。

さて、この式において現在の株価は自明ですが、企業の本質的価値は自分で考えなくてはなりません。著者は将来(3~5年後に株価2倍を狙うと書かれているので、おそらくそれくらいの時間軸)のEPSを予測し、それに業種平均や成長性から妥当と考えられるPERを掛けることで本質的価値を予測することを勧めています。

将来のEPSをどうやって予測するのかが難しいところですが、その方法については「自分なりの投資ストーリーを組み立てていく(p.120)」「決算書や決算説明資料を何期分も読み込む必要がある(p.122)」などと書かれているものの、定性的なやり方に偏っており、具体的な説明にも乏しいように思われました。(EPSを予想する方法は一般化しづらいし、かんたんに書けないのはわかるけど、個人投資家向けの本はここをカッコに入れてしまうことが多いです)

たとえばソニーの事例では、著者が家電量販店に行ってソニーの商品がたくさん売れ筋になっていると気づいたこと、イメージセンサの将来性に期待したことなどが書かれています。このような投資ストーリーと将来のEPSは別の話だと思いますが、著者がソニーのEPSをどのように算出したのかはまったく触れられていません。

また、著者はバリューエンジニアリング投資の原則として以下の5つを挙げています。

2倍高以上を狙える株のみを買う

前出の式に当てはめて、V>1.0となる株を買うということですね。10~20%の上昇狙いでは誤差に埋もれてしまう、とのこと。

3~5年の長期保有

人々の評価が一変するには時間がかかるため、長めの時間軸で保有する。ただし必ず3~5年保有しなくてはならないというわけではなく、自分の考える本質的価値に見合う株価に達したら、そこで売ってかまわない。

5~10銘柄に集中投資する

著者自身は5~7銘柄に分散しているとのこと。

先の明るい企業にだけ投資する

ビジネスが成長している企業に投資する。割安ならよいというわけではなく、成長性がないと駄目というスタンスです。

ボーナスポイントになりそうな材料を探す

バリュートラップにはまらないためにカタリストを探しましょう、みたいな話です。

全体的な所感としては、バリュー投資の中でも「収益バリュー」と呼ばれる、企業の将来の成長と足元の株価とのギャップを取りに行く考え方をうまく説明しており、良い本であると思いました。

他の主要な手法と比べて、著者の提唱するバリューエンジニアリング投資にどのような特徴があるのかを説明している点も誠実です。成功したときのリターンではモメンタム投資に劣ることや、平均的なパフォーマンスで満足できるならインデックス投資でよいということが冒頭で述べられています。